柏木真樹 音楽スタジオ

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今回は、ポジション移動について考えてみましょう。

まず、なぜポジション移動をするのかを考えてください。「当たり前じゃない、ファーストポジションじゃ弾けない音を弾くために移動しなきゃ弾けないからでしょ」その通りです。ではそのためには何を考えなければならないか

ポジション移動は、ファーストポジションの範囲外の音を取るために行うことがスタートです。ニ長調のスケールを例に取ってみましょう。D線からスタートして、2オクターブ進むことを想定します。最後はE線のD音ですから、サードポジションに上がらなくてはなりません。A線のD音で1の指で上がるか、E線のA音で1の指で上がるか、解法は普通 に考えると二通りあります。さて実際に弾いて、録音してみましょう。録音を聞いてみると、ポジションが移動したところが、実際に弾いているところを見ていなくてもばれてしまいませんか。

ポジションの移動について、一番始めに原則として考えるべきことは、以下の3つです。

  • 1)正確に移動すること
  • 2)移動が滑らかに行われること
  • 3)移動した先のポジションがわかっていること

実際の練習では、初めから1,2を同時に訓練すべきです。多くの場合、1には大変神経を使っていても、2を考えていないか、あまり重要視していないように思います。僕のところに来た生徒さんで、すでにポジション移動を習っていた方でも、2をきちんと教わってきた人はとても少ないのが現状なのです。

まず、最近僕のところに来た生徒さんの「とんでも例」をご紹介します。似たようなことを習っている人、ご注意下さい。何故こんなことを書くかというと、実はこのように教わってきた生徒さんを他にも知っているからなのです。僕が出会った中だけでも複数いるということは、かなり多くの先生がこんな指導をなさっている可能性があります。

「ポジション移動は、弦をしっかり押さえたまま指板の上を滑らせる。手の形が崩れないように注意して、ファーストポジションの形のままサードポジションへ1の指を持っていくこと。スピーディーに動くこと」

レッスンは、まさに「爆笑」でした。まず初めに僕が「ポジション移動は、弦を強く押さえたままではダメである。手の形が一定ではいけない。ファーストポジションの形を崩して、1の指を3の指に近くまで持っていくこと」と言ったところ、その生徒さん、突然大笑いして、上記のように習ったことを語ってくれたのです。「やってはいけないことだけを教わっていた」という落ちです。

まず、フィジカルに考えてみましょう。指板の上に指をしっかりと置いたまま移動する(指板の上を滑らせる)と、発生する抵抗は半端ではありません。この力に抗して動くことは、スピーディーな移動を妨げますし、実際に演奏するときにはポルタメントのような不必要な音が発生することは間違いありません。そして、行き先を正確に把握することが困難です。実際に指が動くときには、押さえている状態をやや緩和して、抵抗を少なくしてやらなければなりません。

手の形を崩さない、ということも不思議な指導です。1の指を押さえてサードポジションに移行するときに、「とにかく正しいところに当てる」以外、やりようがないからです。また、せっかく手の形を保存してポジションを上がったところで、行った先の音の間隔はファーストポジションとは異なりますから、全く意味がないのです。

実際に一緒に演奏していると、「派手な」ポジション移動をしている人がとても多いことに気づきます。速く移動するために一生懸命動かして、結果 としてポジションを移動したところがとても目立ってしまうのです。これでは、音楽の進行を阻害することになってしまいます。ポジションの移動とは、例外的な場合を除いて、あくまで「やむを得ず」することであり「今ポジションが移ったぞ!」と大声で主張すべきものではないのです(もちろん、ポジションを移動したことを強調する場合もあります)。

ポジション移動の原則、1を実現するためのポイントは、博打を打たないということです。

これは、ほとんどの先生がきちんとおっしゃっていると思います。「ガイドを使う」と言い換えてもいいでしょう。これに(2)のための手の伸縮を加えれば、基本的な移動の考え方はできあがりです。

A線上でファーストポジションからサードへ移動することを考えます。まず1(H音)2(C#)3(D)と押さえ、3を押さえたら1,2を外します。3を押さえたまま、1の指を3の指に近づけていきます。この時に1の指だけが単独で3の指に近づくのではなく、親指も同時に移動することに注意してください。楽器を外して手の形を見ると、手のひらが縮んでいるはずです。1の指が3の指に十分近づいたら、3の指を置いているところに1の指を入れ替えます。その瞬間に、縮んでいた手のひらは、通 常の形に戻るようにして下さい。

この練習は、初めは「ガイドの音を実際に弾いて」行います。今の例だと、0(A)1(H)2(C#)3(D)(ここまでファーストポジション、以降サードポジション)1(D)2(E)3(F#)4(G)という音を弾くことになります。注意すべき点は、先程の三つの原則に従って考えましょう。この原則に反する事態が起きていれば、何らかの問題が起きています。練習をくり返して、ある程度スピーディーに、そして滑らかに(聞いている人にポジションが移ったことがわからないのが理想)移動できるようになったら、ガイドの音を外して練習します。つまり、0(A)1(H)2(C#)(ここまでファーストポジション)1(D)2(E)3(F#)4(G)という音をだすわけです。このときに、あたかも3の指があるかのように感じてその位置に1を正確に移動することを心がけてください。

下降の場合も全く同様に考えます。

サードポジションにいる状態で1の指を押さえているときに、3の指を1の指に近づけます。指だけを持っていくのではなく、やはり手のひらが収縮していることを確認してください。下降の場合は、1の指がぎりぎりまでそれまでの位 置にいますから、親指はポジション移動する瞬間まで同じ位置にあるはずです。3の指が1の指に「瞬間的に」取って代わると同時に、1の指と親指はファーストポジションの本来の位 置まで戻ってください。

このポジション移動の原則を覚えれば、基本的には1ポジションから4ポジションまでの移動、及び差が3以内(2から5など)のポジション移動は全て練習できるはずです。というより、一つのポジションで十分練習すれば、他のケースでもすぐに応用できるようになるでしょう。最後に、移動した先のポジションをきちんと把握できているかを確認しましょう。

差が3を超えるポジション移動(1から5、1から7など)については、3つの考え方を併用すべきです。初めのうちはこういった「過酷な」移動は出てこないと思いますが、ある程度以上、特にオーケストラなどにはいると、かなり厳しいポジション移動を要求されることがあります。そのために、簡単に考え方を述べておきます。かなり「上級編」ですので、ポジション移動を始めたばかりの方は無視してくださっても結構だと思います。

1)「仮想」ガイドを利用すること

1ポジションから5ポジションへ移動するときなどに原則とする考え方です。1,2,3,4と指を押さえていき、4の指に向かって手のひらを収縮させることは、1から4への移動と同様です。この時に、4の次、5の指があるかのように、4の指の次の音に1を置く感覚を身につけるものです。あたかも5の指の位 置にガイドがあるかのように感じながら移動するのです。1から4への移動がスムースにいくようになっていれば、実は案外簡単に覚えられます。この感覚は、1から6の移動までならつかむことができるでしょう。

2)ガイドを複数回利用すること

G線のファーストポジションのA音からE線の7ポジションのA音(4の指)へ、いきなり移動することを考えてみます(この移動と類似性を持つものには、シベリウスのコンチェルトなどいくつか実例があります。シベリウスは半音高いB音です)。G線上で1の指を押さえたら、オクターブを取ります。D線上の4の指になりますね。ここにまず1の指を持ってくる移動を行います。1ポジから4ポジへの移動になりました。もちろん、移動は滑らかに、スピーディーに行います。次に、またオクターブを取ります。D線上の1の指とA線上の4の指で共にA音を取ります。そして、A線上の4の指に1を移動します。4から7へのポジション移動が完了です。これで、4の指は求めるA音になりました。

実際には例にあげたシベリウスなどでこんなことをしている暇はありません。ほとんど「飛びつく」意識になりますが、この「ガイドを複数回利用する」練習は、とても役に立ちます。まず、各ポジションでのオクターブが取れている必要があること(これが案外難しい)。そして、複数回のポジション移動を瞬時に行う必要があること、が、この方法を難しくしている理由です。しかし難しいということは技術を習得すると非常に上達するということでもあります。

またこのポジ移動の考え方は、応用がいかようにもききますから、様々な場面 で使うことができるのです。いきなり高い音で始まるときに、このポジ移動で求める音までたどりつくことも可能です。この練習をしている間に、いろいろなポジションでのオクターブの感覚をつかめるようにもなるでしょう。

3)飛びつく

これが「究極のポジション移動」です。つまり、行った先に「博打を打つ」わけですね。

なんて書くと、本当に「あたるもなんとか」のように思われるかもしれませんが、実はかなり確度の高いことをやっているのです。

スケール、分散和音などを十分に練習していると、かなりハイポジションまで自分の感覚の中に入ってきます。また、弦長の真ん中(オクターブ上)や、先程の7ポジの4の音、3の音などは、比較的「飛びつきやすい」音でもあります。飛びつきの精度を上げるためには、いろいろな感覚を利用するしかありません。楽器の形状、手の位 置など、種々の要素を体に覚えさせることになります。それを最終的に耳で補正するわけですね。

実際の演奏では、「一瞬早く指を押さえてそのときに発する音で判断して修正する」なんていうこともやっています。このあたりになるとかなり高度な話ですので、上級編でまとめてみようと思います。

-エントリがありません-

少々早いのですが、今回はリクエストのあった「速いパッセージが弾けない悩み」についてです。二つの問題に分けて書いてみます。

速いパッセージを練習するために言われてきたことはたくさんあります。主に推奨されてきたトレーニング法は、

  • 1)ゆっくりからメトロノームなどを使って徐々に速くしていく
  • 2)限界より少し速いテンポで強引に弾いて動きを作っていく
  • 3)指を指板になるべく近づけて置いて、小さな動きではっきりとした運指ができるようにする
  • 4)同じ動きをくり返し練習して反応を速くする
  • 5)無駄な動きをとる、脱力を確認する

などでしょうか。どれも正しく、「トレーニング法」としてはやるべきことだと思いますが、今回はちょっと違った視点で考えてみます。「速く弾くにはどうしたらよいか」という発想を「速く弾けないのは何故か」という方向から考えてみたいのです。

速く弾けない、という悩みも、よく聞いてみると何通りかのパターンがあります。「左手がどうしても速く動かない」「あるテンポまで速くするとそれ以上はぱたっとできなくなる」「右手が速く動かない」「左手も右手も速く動いているのに同期しない」「左手も右手も速く動いているのに音にならない」等、じっくり検証してみるといろいろな原因があるようです。

弾けない原因を以下の三通りに分けてみました。

  • 1)もっぱら左手の問題
  • 2)もっぱら右手の問題
  • 3)右手と左手の問題

これをさらに分類します。それぞれについて小考してみます。

1)もっぱら左手が問題となって速いパッセージが弾けない例とその解決策

(1)まず、左手そのものが速く動かせないケースです。これも大きく二通りに分けてしまいます。そもそも左手の指を速く動かせないケースと、他のこと(例えばキーボードを叩く)ならできるのにヴァイオリンになるとできなくなるケースです。

最初のケースの場合、かなりいろいろなタイプの訓練をする必要があります。まず、脱力ができているかを確認します。脱力ができていないと、指を速く動かすことはできませんから、日常的に「不器用」と判定されているケースがほとんどでしょう。この場合、脱力と手の使い方そのものから訓練しなければなりません。指を単に折るところからスタートして、脱力した状態で指が独立して動く感覚を磨くわけですね。こうした訓練をした後、次のケースと同様のトレーニングをします。

後のケースは、ヴァイオリンを弾くときに左手を動かない形にしていることが原因です。これは、今まで述べてきたような脱力・ボウイング筋などのチェックをして、次に進みます。

(2)次に、何となく速くは動くものの、正確に音程が取れない、きちんと指板を押さえられない、というケースです。

ヴァイオリンのトレーニングとして「速く弾くためのトレーニング」は、もっぱらこの部分に対応するものです。ですから、巷で言われているトレーニング法が当てはまるのも、主にこのケースに限られるのです。逆に言うと、僕が書く必要のない部分でもあります。

一つだけ、ヒントになることを付け加えておきます。それは、「指の開きを頭でコントロールできているか」ということです。ある程度速く弾けるものを録音してみて、音程の悪いところを見付けます。次に弾くときに、その音だけを注意して弾いてみます。速いパッセージの練習をするとき、全体を考えながらくり返し弾くことはかなり難しいのですが、気にする音を少なくすると意外と修正が効くものです。これをやってみてください。もし修正が効かないとすれば、その部分に指などに負担がかかっている可能性があります。ゆっくり弾き直してみて、そこだけに「結節点」がないかどうかを確認します。弾こうとするパッセージ全体について、このようなチェックができると、かなりの確度で「限界」を超えることができるようになります。

巷で言われている練習法の効果・難点などは、書き始めると大変ですので、また改めて書くことにしたいと思います。

2)もっぱら右手に問題がある場合

意外と多いのが、右手が問題で速いパッセージが弾けない例です。左手を速く動かす訓練は皆さんがなさっているので、ある程度解決されていることが多いからだと思います。これも二つに分けます。

(1)右手が速く動かないケース

多くの場合、右手を動かす筋肉を間違って使っています。基本的に、人間の運動は「実際に動いているところから関節一つ手前かその前」の筋肉を使っています。これができていない状態で、特に関節の変形で右手を動かしている場合、動きがかなり緩慢なものにならざるを得ません。幾つかチェック法がありますが、代表的なものを書いておきます。

まず、ヴァイオリンを弾くように右手を構えます。弓を持つ必要はありません。手を軽く握って、肘から先を速い弓を動かすようにくり返し動かしてみます。弓を返す運動をするときに、「がくん」という衝撃がどの程度感じられるか、ということをチェックしてみてください。返すたびに、返す前の進行方向にかなりの衝撃を感じるのであれば、動きを関節の変形で行っている危険性が大きいです。筋肉が正しく使われている場合、この衝撃はかなり緩和されたものになります。運動が動いた二つの終点に加速度を生じているか、中央に勢いを感じているか、と言い換えてもいいでしょう。前者だとかなり「がくんがくん」と感じるはずです。この区別 が付けばしめたもの。

弓を持たずにこのチェックをした場合、関節の変形で動かしていてもかなりのスピードが出ます。ですから、一見関係ないように思われるかもしれませんが、弓を持って弾いてみると一目瞭然。関節の変形で動かしていると、弓の返しがスムースにいきません。それを気にしながら弾いていると、必然的にスピードが出なくなるのです。

このちぇっくは、手首・指などにも応用できます。ただし、紙上では限りがありますので、先生と相談してやってみてください。

(2)速い運動で腕の重みが利用できていないケース

右手に主な原因があって速いパッセージが音にならないケースのほとんどがこれです。要するに、速く動いているときに腕の重みが「死んで」しまい、弦を必死に擦りながら弾いてしまっているために起こることです。

チェックは簡単です。ゆっくり弾くときに腕の重みを十分感じて、次第に速くします。ある時点で、弾いている感覚がはっきりと変わるはずです。加速がついて浮き上がってしまうような感覚です。勿論、音でも判断できます。ゆっくり弾くときには脱力ができてボウイング筋が使えている人でも、速くなるととたんに肩や肘、手首などに力が入ってしまい、腕の重みが使えなくなる人がいます。上記の関節の変形と複合することもあります。

解決法は、腕の重みを使いっぱなしで速く弾けるように練習することです。徐々にテンポを上げていくしかありませんが、弓幅をなるべくたくさん使いながら練習すると効果 が大きいですね。

3)左手と右手の複合的要因

1,2のケースが同時に起きることもありますが、それは「複合的要因」ではありません。それぞれの対策をとっていけば解決できるからです。ここで言う「複合的要因」とは、上記の問題を解決したにもかかわらず速いパッセージを練習しても弾けない、というケースです。「右手と左手がシンクロしない」ケースと、「両手にしたとたんにできなくなる」ケースです。

「右手と左手のシンクロ」の問題については、全く別に詳しく書くつもりですので、ここでは簡単にしておきます。

この問題は、僕は主に「頭の問題」だと思っています。(もちろん、異論はあるでしょう。)勿論、頭の良し悪しを問題にしているのではなく、「頭の使い方を知らない」ことを問題にしています。これは訓練することができるタイプのものです。

右手と左手に同時に頭が指令を出すことは、とても大変なことである場合があります。簡単なことはもちろん実生活でいつも使っていることで、(例えばお茶碗を持ってごはんを食べる、なんていうのもその例です)誰でもやっていることなのですが、やることが複雑化すると次第に困難になります。その様子をレッスンで見ていると、一昔前のコンピューターゲームを思い出します。

(知らない方のために・・・一昔前のコンピューターゲームは、処理能力が今とは格段に違い、複雑な操作になるととたんに画面 が遅くなるのです。例えばインベーダーゲームで、敵がたくさん降ってきて、こちら側もたくさん弾を撃つと、画面 がスローモーションのようになってしまいました。)

頭の訓練ですから、ヴァイオリンを持っていないときでも方法はあります。ヴァイオリンを練習しながらということであれば、右手と左手を違うリズムで弾いたりリズムの分割を変えたりして、「違うこと」をやってみればよいのです。ポイントは「初めは同じことをやっていて少しずつ違う役割を与えていく」練習をすることです。アクセントを意識する場所を変えるだけでも、やってみると結構大変なことがわかります。そんなことが自在にできるようになると、かなりシンクロの問題は解決されるはずです。

両手にしたとたんにできなくなるケースは、上記の「シンクロしない」極端な例だと思ってください。こうした場合、実は1,2が解決できていないケースがほとんどです。右手だけ、左手だけでやってみるとできたのに、両手にしたとたんに元の木阿弥になってしまった、ということが起きているのです。特によく見られるのが、楽器を持ち弓を動かそうとすると、体の意識が中央から両側に散ってしまう人です。典型的なのが肩に力が入ってしまうケース。両肩を上げてしまうと、体の指令は左右に完全に分離してしまい、右と左が「全く同じ動きしかできない」か「ばらばらにしか動かない」という状態になってしまうことがあります。「そんなばかな」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、意外に多いのです。ちなみに、僕はこれを「頭の脱力」と呼んでいます。

以上の問題が、今まで見てきた中で出会った「速いパッセージが弾けない原因」です。これを解決することがまずスタートです。上級編は別項にいたします。

◎ 速く弾けない原因の抽出法 ◎

速く弾けない原因の探り方を考えてみましょう。原因が異なれば、当然、練習法も違ってくるはずだからです。「左手が回らない」と感じた場合でも、真の原因の可能性は多岐にわたります。原因がわからないと対策が立てられないのは、いつも述べているように、病気を治すことと同じなのです。

(以下は、生徒向け講習会の資料の抜粋です)

左手にしろ右手にしろ、運動そのものができない場合がもっとも根本的である。左指が速く動かない場合は、まず運動そのものがそのスピードに達することができないのか、運動はできるが何か阻害要因があるのかの判別をしなくてはならない。具体的な判別法は、どのような運動についてか、何が阻害要因になり得るかを推測して調べるのだが、具体例は次項以下に挙げておく。

具体的な阻害要因が見つからない場合、運動能力が上がらない原因を見出しにくいことがある。頭の指令そのものを速く出すことができない場合と、指令自体は速く出るが伝達経路に問題があったり指令を具体的な運動にするところで速くできない場合などは、判別することが非常に難しい。具体例を挙げておく。

ある速いパッセージが弾けない場合、一小節ごと、ないし1フレーズごとに小さな間を空けて断続的に弾き、その形でスピードを上げていく練習をしてみる。小さな間を空けることでスピードを上げることができる場合は、頭から出された運動の指令が指に伝達して実際の運動になる経過には問題がないことになるが、それでも弾けない場合は、指令自体の問題、ないし運動そのものができないということになる。前者の例は「暗譜しないと速く弾けない」症状を持っている人に顕著なものである。

この他にも、それぞれのパターンによって判別法が考えられる。

運動能力を高める練習の一般論

速い運動ができるようなるために取られる一般的な方法は、以下の三つである。

  • 1)できる速さで運動し、次第に速くしていく
  • 2)とにかく無理やり速い練習をして、少しずつ調整していく
  • 3)他の運動で速さを作り、適用、応用していく

この三つの方法は、いずれも効果がある方法であるが、それぞれに利点、欠点がある。練習によって得られる効果と対応する問題点は

《効果》

  • 1)安定した状態でテンポを少しずつ上げることができる。運動や体の使い方、音程などに気をつけることができる速さを、同時に鍛えることができる。
  • 2)速いスピードに対応する運動能力を高めることができる。
  • 3)速い運動を作りやすいものから始めるので、安定した状態で速いテンポを得やすい。リズム変化などを伴う練習は、リズムで運動を規定できるので、運動自体をコントロールする能力をつけることもできる。

《問題点》

  • 1’)速くすることに限界が来てしまうことが多い。ある速さ以上はどうしても進めなくなることが少なくない。しかも、その「ある速さ」が比較的速くないことが多い。
  • 2’)手の形、ボウイングなどが乱れてしまうことがある。音程の調整も難しく、調整することができるまでにやっていることがとてもストレスになる。
  • 3’)他の運動を作ることが易しくないことも多い。他の運動を練習することで、思いがけない癖がついたりすることもある。

こうした「通常の」練習方法を取るときには、この利点・欠点をよく理解して練習することが必要である。特に、1,2の練習は、利点と欠点が相互に補完関係になっているので、両方をやることで初めて効果が現れることも少なくない。

◎ 頭の問題 ◎

(これも、生徒さんたち向けの講習会資料の改訂したものです)

今回は、「〈 講座22 〉速いパッセージの練習1」の最後に書いた「頭の問題」をまとめてみようと思います。ここで述べることは、速いパッセージの練習法として説明させるものですが、実際には、他の運動にも考え方を応用することができます。そうした意味で、是非、知っておいてほしいものです。適切な訓練によって頭の処理能力を上げることは不可能ではありません。前提として、頭の働きを理解するために、関連することを少し説明しておきましょう。

頭の働きの構造(感情的なこと、感覚的なことを除く)は、記憶することと考えることに大別できます。記憶することは、文字通り、出遭った事象を頭の中に格納する作業であり、考えることとは、考える対象を格納された記憶と関連させて、ある論理を組み立てる作業です。この二つを簡単に説明してみると、格納される形式はある種の電気信号で、「関連させること」は、この電気信号同士を結びつける作業なのです。この点では、コンピューターがやっている作業を考えてみれば、想像がつくでしょう。

記憶は、短期記憶と長期記憶に分かれます。短期記憶は、ある事象を一時的に頭の中に置いておくもので、長期記憶は短期記憶をしっかりと頭の中にしまいこんだものです。コンピューターでデータをセーブする前のデータが短期記憶、セーブしたものが長期記憶であると比較して理解してください。パソコンの電源が落ちてしまったときに、セーブしていないデータは消滅してしまいますが、セーブしてあればなくなりません。短期記憶も、そのままではすぐに忘れてしまうシロモノで、どこにしまったかを示すタグを付けてきちんとしまわれた時に、初めて使い物になる記憶になるのです。この短期記憶は、音を短時間覚えておくことに使われるものであり、音感トレーニングの基本ともなります。

運動能力を上げていく訓練で必要な頭の働きの向上は、直接的な運動の指令とその指令を出す判断とがからみあった問題です。直接的な指令の問題は単純な「運動神経の問題」と理解され、運動の指令を判断によって出す能力の問題は、頭の処理能力の問題に帰着します。前者は単純に「運動能力を高める」作業ですから、ここでは取り上げません。すでに述べたところを参照してください。

運動の指令を判断して出す脳の働きは、頭を訓練することによって高められます。もちろん、運動そのものを速くしていく訓練でも鍛えることは可能ですが、頭を鍛えることを目的とした練習を行うことでその効果はアップします。そのための訓練法は、簡単に言えば脳に負荷をかけて能力を高めていくことに他なりません。

こんなことを言い切ると、「お前は脳の働きを完全に理解しているのか?」というクレームが来そうで怖いですね。もちろん、脳の働きはまだ解明されていない部分も大きく、簡単に言えるものではありません。しかし、これまで積み重ねられてきたトレーニング法(もちろん、ヴァイオリンに限った話ではない)や、頭の働きがわかってきた部分などから類推することは、ある程度可能なのです。ここでの話も、その範囲でのことであると了解してください。

頭の指令に体がついていくことと、頭の指令自体を鍛えることの違い

今回のテーマの本質は、この部分です。通常の練習で速くすることができない場合、何が問題になっているかということを、より正確に理解するためのものです。

メトロノームを使って徐々にテンポを上げていく、という練習を考えてみましょう。メトロノームが打っている音に(場合によっては目を)注意を向けていると、脳はその一定のカウントとシンクロしようとします。これは、単にメトロノームに合わせるような練習でも、メトロノームのカウントを頭で再現しようとして練習する方法でも、本質的には変わりありません。最初はゆっくり、次第に速くしていくことが一般的ですが、このときの脳の働きは、頭でカウントを認知している状態に実際の運動をシンクロさせようとするものです。これは、頭の指令に運動が付いていけるようにするための練習に他なりません。そのときの頭の働きの流れを図示してみると、以下のようになるでしょう。

  • 1)メトロノームのカウントを認知する
  •       ↓
  • 2)認知したカウントを自分のカウントとして取り込む
  •        ↓
  • 3)そのカウントに演奏しようとする音符をはめ込む
  •        ↓
  • 4)はめ込まれた音符に必要な運動を判断し、運動の指令を出す
  •        ↓
  • 5)実際に指(ないし腕)が運動する

この練習には、早晩、限界が来てしまうことがほとんどです。なぜならば、頭が出す指令そのものをスピードアップしたり、指令が出るタイミングを速くしたりする練習にはなっていないからです。上の流れをよく見てください。頭の働きも、実際にそれが再現されるフィジカルな運動も、すべてが一致させるタイプの練習になっていることがわかるでしょう。もちろん、特に4、5の一致は必要で、そのための訓練は必要です。しかし、相変わらず限界が来てしまうことには変わりません。その理由のひとつは、頭でイメージできることと実際の運動を起こす指令とを同列でトレーニングしてしまっているからです。

これに対し、主に4の働きを速くする(スピードを上げる、タイミングを速くする)ための練習に効果があることが多いのです。そのためには、実際の運動という「重たいもの」を外してしまわないと、なかなか成果が上がりません。

以下の練習法は、当初、主にカイザーが終了して、ドントのop.37やクロイツェルに進んだ生徒さんたちのうち、必要性が高いと思われる方を対象にレッスンで行っていたものですが、最近はもっと早い段階で使うようにしています。

【練習例】ドントop.37 / 4番から

このエチュードは、弓先で速くクリアに弾くこと、デタシェなどの奏法練習など、いろいろな組み合わせで使うことができますが、速く弾くことが比較的難しいところが多いのです。最初のつまずきは、×小節目にやってくる人がほとんどです。ポジション移動と弓のターンの組み合わせに戸惑い、一時停止してしまったり、突然テンポが落ちたりする症状が出ます。これを改善するために、×小節目で一旦運動を止めます。次からは、矢印の間で、ゆっくりから速く、という運動を繰り返します。その時に、ゆっくり弾き始める時に、前のテンポで頭で歌う努力をしてみます。この練習は、だんだん速くする必要はありません。概ね10回ほど弾いてみて、突然楽譜通りのリズムで弾いてみます。すると、あら不思議、今までどんなに練習しても指の運動が追いつかなかったパッセージが、すんなりと弾けるようになる(ことが多い)のです。

 

楽譜の読み方による速さの問題

最後にもう一点付け加えておく。速く弾くことができない、特に「指が回らなくなる」のではなく「あるところでぴたっと止まってしまう」症状がある場合、楽譜の読み方に問題があることが多い。楽譜を読む時に弾いている音を見ていると、次の音の処理が間に合わないからだ。常に、少し先を見られるように意識したい。

左手を先行させる訓練を徹底することで楽譜の少し先を見ることが可能になる人も少なくないが、テンポを上げる時に、いつでも楽譜の先を見る意識を持っていることが大切である。また、一つ先の固まりを一度に読むことができるようになると、処理能力は格段にアップする。ある程度のスキルが身に付いてからの話だが、1フレーズずつ、「固まりで読む、弾く、固まりで読む、弾く」という練習も、とても効果がある。

先日、アメリカで活躍している、ジュリアード出身のヴァイオリニストとお話をする機会がありました。楽しいお話がいろいろできたのですが、その中で「デタシェ」が話題にのぼりました。デタシェはいわばボウイングの基本とも言えるもので、皆さんも苦労されている方も少なくないと思います。私は何回かデタシェについて触れましたが、簡単にまとめてみたいと思います。

デタシェは、通常フランス語で「detache」と書かれますが、英語でこの言葉に当たるものは「de-touch」で、「接触しない」(touchの反対語)です。この言葉からもわかるように、本来は「音と音がつながらない、隙間がある」ことがその意味です。モーツァルトの時代には、今で言う「スタカート」が「デタシェ」の意味で使われていることがありました。また、テヌートと普通呼ばれている記号が、まさに「デタシェ」であったりします。

記号や言葉と奏法については、本によって書かれていることが違ったりしますので混乱されている方もいるかもしれませんが、基本的には楽譜に書かれている記号は「どのような音が要求されているか」を表しデタシェ、スピカートなどの言葉は「どのように弾くか」という奏法を示すのだということをごっちゃにしないでください。

例えば、ある音符に「スタカート」記号が書かれていた場合(時代や作曲家によってことなりますが)、その場所で「スタカート」という結果を伴う音が要求されています。その音が、減衰しない「デタシェ」という奏法で弾かれるべきなのか、減衰する「スタカート」を選択すべきなのか、「飛ばし弓(スピカート、と呼んでおきます)」がふさわしいのか、ということをさまざまな条件(上記のような、時代、場所、作曲家、曲中でのフレーズなど、たくさんのことが問題になります)から判断して選択するわけです。紛らわしいのは、この両者に同じ言葉が使われていることが多いこと、また、求められる音の多彩さが、さまざまな奏法の分岐を生んだこと、でしょう(このあたりの話は、別項に書きたいとおもっています)。

さて、デタシェですが、具体的には、子音をつけて減衰せず、最後に響きを止めないで瞬間的に弓の運動を止める、という運動から得られる音になります。前述のヴァイオリニストと話が出たのは、この練習法についてでした。

実は、このデタシェ、弓先で「ぎちぎちと」練習させる先生が、日本では多いのです(とても残念なのですが、名前を聞けば誰もが知っている有名な先生でも、こうして弾かせていることがあります)。子音がつく、減衰しない、というところまでは良いのですが、弓を腕の力で止めてしまい、響きを止めた音になってしまう人がたくさんいます。それはこの指導法の影響です。前述のヴァイオリニストに話をしたところ「日本ではいまだにそんな教え方をしている先生がいるのですか?」と心底驚いていらっしゃいました。「響きのある美しい音の方がいいに決まってるのに、なんでそんな弾きかたを指導するのですか?」と逆に問われて困ってしまいました。もちろん、すてきなデタシェを聞かせてくださる演奏家が、日本にもたくさんいらっしゃいます。しかし、残念ながら、指導現場ではまだ響きを止めるように教えていることが少なくありません。そんな現状を、彼女はとても不思議に感じたようです。

実際に、この二つのタイプの音を、視覚的に理解していただきましょう。

 

 

下手な図で申し訳ありませんが、比べてみてください。上図の音は、最後に瞬間的に減衰しています。下の音は、力を加えて弓を止めてしまったときにできる音です。どちらも、「子音がつく、減衰しない、音と音の間が開いている」という条件は満たしていますが、音の終わり方が違いますね。上図のような音にすると、弓を止めたと同時に瞬間的に弓の圧力が軽くなり、結果として楽器の振動を止めません。しかし、下図のような音になると、弓を止めた瞬間に楽器の響きも同時に止めてしまうのです。

下図のように、楽器の響きを止めるように弓の運動を終了する奏法が、ヴァイオリンに(通常の奏法として)必要かどうか自体を、私は実は疑っています。この点について今回は述べませんが、楽器の響きを瞬間的に止めることによって得られることの価値がわからないからです。

下図のような音を作り出すことは簡単ですが、上図のような音を速く連続させることは大変です。どうしたらよいのか、特に、練習量がプロほどではないアマチュアにとって、またレイトスターターにとって、どのような練習法が効果的かは、かなり長い間私にとっての大きなテーマでした。私にとってデタシェとは、弓を力ずくで止めない奏法でした。今から考えると、これは非常に幸運だったと思います。中高時代の先生が奏法を全く教えてくださらない方で、単にエチュードを順に進むだけのレッスンだったので、「デタシェ」という言葉の意味も知らずに育ったからです。結果として、自分がデタシェをどのように練習したかという意識がなく、響きを止めることが「単に嫌だった」ために、そういった奏法を身につけずにすんだのだと思います。ですから、ヴァイオリンを教えるようになってからさまざまな練習法を試してみましたが、現在は下記のような方法を採用しています。比較的成果が上がっており、レイトスターターでも自分の奏法として身につけることができるのではないかと考えています。

練習のポイントは

  • 1)子音のついたスタート
  • 2)減衰しない音を速い弓で出すこと
  • 3)響きを止めない音の終わり方

の三つになります。これを、それぞれ別に練習した後、デタシェの練習に移行します。

子音をつける、減衰しない音を得るための練習法は、別項にまとめることにして、「響きを止めない音の終わり方」と「デタシェそのものの練習法」を簡単にまとめてみることにします。

まず、響きを止めない音の終わり方です。一番簡単な方法は、音の最後に弓を持ち上げてしまうことでしょう。弓が弦から離れると、響きを無理やり止めてしまう要素がなくなります。これはすぐにできると思います。音が連続しない場合、この弾き方で十分です。ところが、弓を持ち上げる動作は大変腕全体に負荷がかかるもので、連続して運動することは困難です。もちろん、弓を持ち上げるタイプの飛ばし弓(これを、私は「ロング・スピカート」と呼んでいます)はありますが、音のタイプは「減衰音」になってしまい、目的を達することができません。しかし、弓を「持ち上げる」と響きが止まらない、ということは、奏法を考える上でヒントになります。要するに「重みをかけない瞬間を作る」ということです。この「瞬間」が、弓が停止する瞬間と一致すればよいのです。

このためには、弓が止まる瞬間に重みをかけている指が一瞬緩むことによって腕の重みを弓に伝えている回路を切断する、という方法をとっています。実際に自分が何をやっているかを理解してみて気が付いたことですが、このときに腕の重みを軽くしないことがポイントです。腕自体は重みを残したまま、弓に重みを伝える部分だけを瞬間的に緩ませるのです。これは非常に小さな運動であり、次のスタートのときに元通り重みを伝える回路を「on」にすれば、すぐに子音の付いた音を続けることができるのです。極めて小さな動きですので、ソリストの手を見ていてもなかなか気が付かないことですが、美しいデタシェを聞かせてくださる演奏家は、動作の大きさの差はあっても、このような運動をしているはずです。厳しい訓練を重ねれば、かなり大きな運動でも連続したデタシェができるようになるのかもしれませんが、アマチュアにとってはこの運動が「いかに小さく、弓を返すタイミングにぴったりと合わせて」できるようにになるかが、成否のかぎを握っていると思います。

実際には、子音をつけて弾き始め、減衰しないように注意して、弓を止めるときに重みをかけている指を弛緩させる(場合によっては、やや浮かす、軽くする)練習を繰り返します。初めのうちは、ややゆっくりめで大きな弓(上半弓ほど)で練習しましょう。チェックポイントは上記の三つですが、特に音を止める時に、弓の運動が止まる瞬間に指ができるだけ小さな動きで緩んでいるかどうかを厳密にチェックします。

タイミングがどうしても取れない場合、他の方法で「瞬間的に緩む」ことを学びます。どんな方法でも良いと思いますが、私は下の写真のような方法をとっています。

{写真挿入予定}

左手を写真1のように保持し、写真2のように右手を軽く打ちつけます。打ちつける瞬間までは右手は軽く握っていますが、打ちつけた瞬間に指を弛緩させます。指は写真2ではまだ丸く握られていますが、弛緩した瞬間に写真3のように外側に向かって伸びるはずです。このタイミングが、右手を打ちつけたタイミングとぴったり合うことが必要です。

このトレーニング、実は結構苦労する人が少なくありません。右手を打ちつけた直後に指を弛緩してしまったり、打ちつける直前から指が伸び始めたり、なかなかタイミングが合わないのです。逆に言えば、この運動が苦労せずにできる人は、「瞬間的に緩む」動作を覚えることが比較的楽にできるでしょう。

私の生徒は、ほぼ全員(現在は30人ほど)、この「子音と止める」という、デタシェの準備に当たるトレーニングを通過しています(現在通過中の人もいます)。速い人だと一月、時間がかかる人でも半年ほどで、この運動ができるようになっています。この「子音と止める」ができると、スケールでゆっくり練習していただいてから、エチュードなどでデタシェの練習に入ります。一から始める場合でも、平均すると3ヶ月から半年でこのトレーニングに入ってもらいます。ある速さ以上でできるようになるころには、左手も少し動くようになっていますから、カイザーなどを使ってデタシェの練習ができるようになるのです。タイミング的には、こうした右手の奏法のトレーニングは、無理がこないように気をつけながら、なるべく早期のうちに始めた方が効率的だと思っています。他の先生のところに長い間いて、左手の運動はとても上手な方でも、きちんとしたデタシェができない例は少なくありません。こうした場合は、基本を覚えていただいた後、クロイツェルやローデでデタシェの練習をすることが可能です。

このような方法で会得したデタシェは、音がとまらない、品の良いものになります。是非、試してみてください。