柏木真樹 音楽スタジオ

トップページ > アンサンブル講座 > lesson 1-3「弦楽器の発音」

第3回目は、弦楽器の発音についてです。そんなん、楽器の奏法のテクニックの問題じゃん、と言わないでください。アンサンブルにも密接に関係することなんです。

プロとアマチュアの差、と言ったときに、何を想像しますか。そんなもん、たくさんありすぎて・・・まあそう言わずに話を進めましょう。

弦楽器の達人とそうではない人にはっきりとした違いがあることの一つに、音の立ち上がり、があります。本当に上手な人たちに混ざって弾いていると、周りの人たちの音が「先に出てくる」ような感じがするときがあります。別 にフライングをしているわけではありません。これは、音の立ち上がりがシャープなので、速く他人に音が届くのです。

達人とそうでない人の違いがよくわかるのが、弓のスピードです。これは、多くの人が気がついていることと思います。上手な人のボウイングは、きびきびしていますよね。でも、それだけではなく、音の立ち上がりの違いにも気をつけてほしいと思います。

音の立ち上がりをはっきりさせて、と要求すると、強く弾いたり、圧力をかけたりしてしまう人が多いですね。これは立ち上がりとは関係のない作業です。アクセントがついたような音は、邪魔になることの方が多いです。ましてや、力をかけてしまって音がつぶれてしまっては仕方ありません。

音は、羊羹をすぱっと切ったように、初めから均一な音でスタートすることが理想です。そのためには、スタートする時点で、適当な重みがかかっていて、進行方向に等速で一気に進むことが必要です。これが実はなかなか難しい。細かい話は、それこそ楽器の奏法の話になってしまいますのでここでは省きますが、こういう音が「きっちりと合った」アンサンブルには必要なんです。

特に小さい音で出なくてはならないときなど、「ふわぁー」とか「もあぁあ」なんていう弾き始めになってしまうことがよくあります。こういう音でスタートすると、きっちり合わせることができないことは、すぐ想像がつきますね。かといって、強引に「えいっ」と出てしまうと、汚い音になったり、場合によっては周りの顔を(> <)こんな風にしてしまうような音が出たりします。

「もあぁぁぁ」型のスタートでも、すぐに安定すれば、非常に近いものにはなります。ですから、多くの弦楽器の指導者が、汚い音を嫌って、この「スタートから一様」でない方法を推奨しているようです。熟練してくればスタートも気にならないくらいになるだろう、ということだと思いますが、始めからボウイングの練習にこのスタートの練習を取り入れてしまう方がよいような気がします。

ダウンボウに比べて、アップボウのスタートはさらに難しいかもしれません。でも、これは「一生ものだ」と思って練習をしてください。