柏木真樹 音楽スタジオ

トップページ > レイトスターターのためのヴァイオリン講座 > 〈 講座17 〉左手の考え方と訓練

今回は、左手の考え方と訓練法について簡単に述べてみます。

左手をどうやって鍛えるか、ということを考える前に、まず左手がどのような状態にあればよいのか、ということを少し考えてみてください。左手について考える場合、「左手の形」には気を付けている人が多いと思うのですが、左手全体をきちんと考えてられている人は以外に少ないようです。

左手の運動性能を落とさないような形と基本性能の獲得

まず、楽器の構え方からチェックします。楽器を構えるとき、左肩が極端に上がっていたら問題。肩に力が入っていることだけでなく、左手の運動性能がはっきりと落ちます。これは楽器の持ち方にも直結する問題ですから、大変です。

基本的には、楽器を持つときに肩が上がっていないことが理想です。肩をやや上げないと楽器が保持できないと感じている人が多いようですが、実際には肩当てや顎当てを工夫すること、持ち方の発想を変えることで対処できる場合が多いものです。左肩があがらなくなると、左手が嘘のように楽に動くようになる人がいるのです(詳しくは、「ストリング」誌10月号に写真入りで解説します)。

もう一つは、左手を「楽に落とす」ということです。肘の位置をどうとらえるかという問題ですね。よく「肘が入りすぎない」とか「もっと入れて」という表現がされますが、まず「一番楽に左指が動く姿勢を発見する」ことが大切です。肩や肘、手首に力が入らず、自然に指だけが動く位置が理想です。

さらに、左肘の状態をチェックします。手を指板を押さえる形にしたとき、左腕の何処が回転しているかを確認してみましょう。肘の付け根がやや回転して、肘から先はあまりひねっていない状態が理想です。特にレイトスターターの場合、肘が全く回転せず、肘から手首までを一生懸命ひねってしまっている人をよく見かけます。これは、左指が動かない・開かない、ヴィヴラートがかからないといった症状の根本的な原因である場合がとても多いのです。私自身、たくさんのレイトスターターを見るまで、こんなことには全く気がつきませんでした。是非チェックしてみてください。

もし肘が全く動かない場合、肘の関節を柔らかくする訓練をお勧めします。肘の上下を持ってもらってねじるように動かしてもらうことをくり返すのが一番効果 がありますが、一人の場合、テーブルの上に肘から上を付けて、右手で腕をひねることで似たような効果 を得られると思います。一週間やそこらでなんとかなるものではありませんが、根気よくやってみてください。

次に、指だけが独立して動く訓練です。

楽器を構えて弾いてみると、指が指板を挟んだり、力を入れて押さえつけたり、はたまた握ってしまったようになることすらあります。これでは指は思うように動きませんね。まず、指だけが動くことを確認します。

初めは、手首を机の上に乗せて、キーボードを叩くような訓練から始めます。この時すでに、指以外を盛大に使っている人は、楽器を持ったときにも指を独立して動かすことができません。指だけで「とんとん」と机をたたけるように訓練します。次に、楽器をギターのように構えて同じようにやってみます。それができたら、楽器をやや上に上げて・・・と順に、実際に弾くときの形に近づけてやるのです。その時に、どこかで「結節点」ができるはず。そこがその人の「関門」になります。そのできなくなるところで何が起こっているかを検証することで、何を訓練したらよいかを見つけることができるはずです。

指を速く動かすこと、開くことも、同様に順にやってみると効果的です。開くための訓練はほかにもいろいろ必要ですが、まず腕の形を楽器を構えるところに持っていく過程で力がはいってしまうところがどこにあるかを見つけることがスタートになるのです。