柏木真樹 音楽スタジオ

トップページ > レイトスターターのためのヴァイオリン講座 > 〈 講座01 〉はじめに…何故ヴァイオリン?何をやりたいの?

本論の前に、これから楽器を始めようと思っている方へ、一つ二つ書いてみたいと思います。

あなたは、何故楽器を始めたくなったのでしょうか?そしてたくさんある楽器の中から、なぜヴァイオリンを選ぼうと思ったのでしょうか?

ヴァイオリンという楽器は、かなり「とっつきにくい」部類にはいると思います。ピアノのように叩いて音が出るわけではないし、ギターのように音程を作るフレットがあるわけでもありません。それなのに、何故「苦労してまで」ヴァイオリンを習いたいと思われたのでしょうか?

もちろん、ひとりひとりの持っている答はそれぞれでしょう。美しいヴァイオリンの音に感激して始めようと思った人もいるでしょうし、合奏ができるから、という理由の人もあるはずです。Niftyのフォーラムでは、オフでオケを聴いていたリスナーや合唱の人たちが、「あちら側(演奏者側)に座りたい」という「合い言葉」で、どんどん楽器を始めていた時期もありました。

大人になってから楽器を始めることに抵抗が無くなってきました。それ自体、とても喜ばしいことだと思います。子どもの数が減少しているという「サービスを提供する側の論理」もあるにはあるのですが、多くのヴァイオリン教室が、大人向けのサービスを始めています。始める方にとっても、選択肢が拡がり、いろいろな可能性が増えているように思います。

あなたは、「何をやりたいのか」ということを(漠然としていてでも結構ですから)持っているでしょうか? 実は、それによって選ぶべき道は違うことがあるのです。選ぶべき先生、楽器なども、それによって違います。そして、「ヴァイオリンじゃなくてチェロの方がいいよ」というアドヴァイスすらあり得ます。

まず、「なるべく長い間、体に負担がかからないように楽器を続けたい」と思っていらっしゃる方。手の大きさにもよりますが、場合によってはチェロの方が良いかもしれません。特に年齢が高ければ高いほど、ヴァイオリンとチェロの難易度の差は大きくなります。(これは、楽器としてチェロが易しい、ということではありません。体が出来上がってしまった大人にとって、ヴァイオリンの方が負担が大きい、ということを意味するだけです。)

「何をやりたいの?」ということも重要です。自分の人生を賭けてできるところまでやってみたい、と思われている方をもっとも極端な例とすれば、ただちょこっとならしてみればよい、というのが反対の極論でしょう。ほとんどの方はこの間にはいるわけですが、それにしても、「アマチュアのいろんな世界でオケも、室内楽もばりばりやりたい」という方と「気の合う仲間と易しい曲を一緒にひければいい」という方もいらっしゃいますね。

ここから先を読まれる前に、ちょっと立ち止まって考えてみてください。自分が何をやりたいのか・・・

もちろん、例えば、「30や40すぎて始めてどこまで上手になれるのか」という不安はあるでしょう。そういう不安には、ある程度お答えできるかもしれせんが、ご自分の意志にまさる上達の秘訣はありません。その意志を、いろいろなこと(例えば、先生の選び方もその一つです)に上手に反映させていかないと、子どもから始めた人との「絶望的な差」はなかなか埋まるものではありません。しかし、道はどこかにあるはずです。

私は基本的に、「自分の限界まで挑戦したい、少しでも上手になりたい、少しでもたくさんの曲を弾きたい」と考えている人を中心に、この文章群を書き進めていきます。ですから、書かれていることは少々「厳しい」かもしれません。「苦労したり努力したりしてまでやりたくない」という方には、そぐわない文章になるかもしれません。私のやりたいことは、「本当に一生懸命になっている人」に、一人でも多く「演奏する喜び」を味わってもらうことですから。

ヴァイオリンは、本当に奥の深い、魅力的な楽器です。その世界は、知れば知るほど、進めば進むほど楽しみも、求めるものも大きくなるのです。