柏木真樹 音楽スタジオ

トップページ > アンサンブル講座 > lesson 1-8「オーケストラと指揮者の関係」

以前のドレ会のときにも、「指揮者とオケの関係」についてたくさんの質問を受けました。このような簡単な「紙上レッスン」で語れるようなものではないのですが、基本的なことを述べておきます。

まず、指揮者がオーケストラをどう考えているか、ということを知ってください。

指揮者がオーケストラを振るとき、おおざっぱに言って二通りの考え方があるようです。一つは、指揮者は音楽を創る「独裁者」である、というもの。極論を言えば、楽曲全体のことは指揮者だけが認識していればよい、そしてその音楽を実現するために、できるだけ正確な指示をオケにすることが最大の仕事、というところでしょうか。もう一つは、指揮者は「音楽を知っている」プレーヤーの能力を引き出し、自分の思う演奏へもっていく、というもの。

この二つのタイプの指揮者は、練習の時の指示の仕方で簡単に見分けることができます。前者は、具体的な指示(ここはもっと弱く、もっと激しく、など)がほとんどです。それに対して後者は、(特にアマチュアに対した場合)、説明的な指示が多くなります。プレーヤーがその音楽を十分理解していない場合、それを浸透させることに重点を置くからです。

どちらが指揮者のあり方としてよりよいか、という議論はしません。現実に両者が存在しているし、「誰それが好き」という個人差を無視することになりかねませんから。ただ、指揮者がオケに「何をしてほしいと思っているか」ということは、知っておいてください。

さて、オーケストラ側としてはどう指揮者を見たらよいのでしょうか。

もちろん、指揮者の言うことは「絶対」ですから、「指示」には従うしかありません。しかし、我々アマチュアにとっては、指揮者だけがプロフェッショナルである場合がほとんどですから、その経験や知識を利用しない手はありません。ですから、単に曲を「指示通りに演奏する」ことを練習するだけでなく、楽曲の意味を知るために、指揮者を積極的に利用したいものです。

「何故」という質問は、とても「有効」なものです。何かを理解した上でやることと、単に言われたからやるのとでは、結果 が異なることが多いと思います。アマチュアのオケの中には、「指揮者になんかおそれ多くて質問なんかできない」と思っている人が、特に弦楽器のプレーヤーに多いような気がします。確かに、トップを差し置いて直接質問することが良いかどうかは場合によるでしょう。(昔あるオケでリーダーをしていたとき、後ろに座っていた大先輩が練習中に直接トレーナーに質問やら意見やらを言っていて、とても胃の痛む思いをしたこともあります)そんなときには、トップの人に質問して、その上で指揮者に質問してもらえばよいでしょう。ですが、疑問を自分の中にとどめて置いてはいけません。