柏木真樹 音楽スタジオ

トップページ > Blog > 日記 > アンサンブル合宿終了/生徒たちと偉大なる「音楽の虫」との最高の2日間

恒例の山中湖アンサンブル合宿が終わりました。今年は、講師にチェロの津留崎直紀さんをお迎えして、レッスンに、遊びに、と、とても充実した2日間になりました。生徒たちも満足してもらえたのではないかと思います。(写真は、津留崎さんと私以外は加工してあります)

深夜の発表会の開始は、ペンションのオーナーも参加していただいてのチェロ4重奏。チェロアンサンブルを聞くと、いつも「チェロっていいなぁ」と思います

そもそも、こんな合宿を始めたのは2004年のことですから、今年はちょうど10回目にあたります。合宿を始めたのは、なかなかアンサンブルをする機会がないレイトスターターにカルテットの体験をさせたい、ということが一番の理由でした。しかし、最初の年の合宿は、とてもカルテットなどに手を出せないと(私が思ってしまった)生徒もいて、ヴァイオリンのアンサンブルや、易しい弦楽合奏なども交えた曲目でした。カルテットと言えば、参加したベテランが若干難しい曲に挑戦したくらいで、後は、モーツァルトの初期やアレンジもの、バロックなどしかありませんでした。

これまでの参加者には、ずっと続けて参加したい人、ある程度体験したら他のアンサンブルをやってみる(市民オケなど)人など、それぞれですが、続けて参加している人は、だんだんレヴェルが上がってきます。最初は、モーツァルトの初期やハイドン、やってもベートーヴェンのop.18-4などでしたが、今年は、とうとうこんなとんでもないプログラムになってしまいました。

合宿の発表会で取り上げた曲:

生徒の課題はほとんどが弦楽四重奏。私はかなりくたびれた顔をしていますが(苦笑)、これは最後の演目のチャイコフスキー。生徒がファーストを弾くことも少しずつ増えていくと思います。

・バッハ「ゴールドベルク」津留崎さんアレンジ版
・ハイドン「鳥」
・ハイドン「皇帝」
・モーツァルト d-moll
・シューベルト「死と乙女」
・チャイコフスキー 第1番
・ドビュッシー カルテット

これに、合宿場所のペンションのオーナーが加わったチェロ4重奏(FitzenhagenのAveMaria)とチェロのトレーナー役がヴァイオリンに持ち替えた、モーツァルトのヴァイオリン2重奏、というラインナップで、合宿最後の発表会を行いました。

私たちの合宿は、とても「贅沢」なものです。通常、二人の先生(私ともうひとり。例年だと私のアシスタントをしてくれている長谷川先生ですが、今回は津留崎さんにお願いしました)と、アマチュアのベテランたち(アマチュア・オーケストラではトップを弾いているような人たち)に、生徒を挟んでカルテットを練習するのが基本形。なかなかこのような体験はできないので、楽しく「引っ張ってもらう」ことが目的です。初期の頃は、トレーナー役も初見(ではなく、何十回目の初見、という曲がほとんどですが)で弾けるような曲ばかりでしたが、最近の曲はそうはいきません。ヴォランティアでお手伝いしていただいているトレーナー役のみなさんには、本当に感謝です。

「死と乙女」です。アマチュア相手でも全開の津留崎さん。レッスンでも厳しい要求が。

今回の「目玉」は、津留崎さんでした。私は、偉そうに指揮をしたり本を書いたりしていますが、本物の「演奏家」ではない。演奏家、すなわちよい指導者とは言えませんが、それでも演奏家の経験があることはとても意味がある。今回も、「できるだけ津留崎さんのレッスンは見学すること」と生徒にはお願いしておきました。

ここからが「本題」です

津留崎さんは、合宿に来て細かいスケジュールを聞いて「そんな、ブラックな!!」

生徒は、基本的に自分の持ち曲だけです。ところが、先生役の二人は、休みなし。今回はチェロが1人多いので、ヴィオラのトレーナー役も休みなしです。二日目のスケジュールは、

9時~12時 レッスン
13時~18:30 レッスン
19:30時~21:00 レッスン
21:00~ 発表会
0:30 打ち上げ

というとんでもないもの。私を含め、トレーナー陣は、最低12時間、打ち上げを入れれば14時間ほど楽器を弾いていることになります。津留崎さんは、「バカンスのつもりだったのに、こりゃしんどい」と何度も口にされました。が・・・

いざ、レッスンが始まると、顔つきが変わります。その目は本当に「ひとつの音も聞き逃さないぞ」と言っているようだ、と生徒がびっくりしていました。生徒相手に弾く時でも本気全開。まぁ、そこまでは「お約束」

「音楽の虫だぁ」と感じたのは、打ち上げでアルコールが入ってから。

「アルルの女」が始まると、ワイン片手にレクチャーが始まりました。演奏していない生徒たちも熱心に聞いていました。「続きが聞きたかった!」という声がたくさん。また、チャンスがあるといいですね。

生徒がすぐに参加できるように、いつも易しい曲をたくさん弾きます。アマチュア作曲家の大山さんのアレンジ曲集も定番。その中に「アルルの女」がありました。演奏が始まると、ワインを飲んでいた津留崎さんはがばっと立ち上がり、「ちがう、ちがう」と、真ん中に立ってレクチャーを始めました。「そもそも、アルルの女は・・・」レクチャーの後は指揮。普段は一回ずつ弾き通すだけなのですが、「もう一回!」

それで緊張が解けたのか、完全に生徒の中に混ざって弾きっぱなしです。途中で私がチェロを弾き始めると、なんとヴァイオリンを手に。3時半まで、みんなと一緒に飲みながら弾いて楽しんでいました。

日本人のプロは、こういう場であまり弾きたがらない人が多いように思います。しかし、「そこに楽器と楽譜があれば音を出すしかない!」というように感じて、とても嬉しく思いました。

翌朝は、台風のまっただ中だったので、午前中の予定は中止して解散になってしまいましたが、生徒たちには(そして、私を含めたトレーナーにとっても)とても楽しい二日間を過ごすことができました。

改めて、津留崎さんとトレーナーの皆さんに、心よりお礼を申し上げます。

[ 2013/09/19(木) 11:57 ] 日記, 講習会| コメント(0)
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