柏木真樹 音楽スタジオ

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26
Aug.
2021
2021/8/26 Thu. 19:15

ここのところ、飲食店と音楽家の同質性について考えさせられています。

異論はたくさんあるでしょうが、思っていることを書いてみようと思います。

これまで要請を厳密に守ってきた多くの飲食店の中に、やむに止まれず酒類の提供を始めたところがあることは盛んに報道されていますのでご存知だと思います。私の知っている(良く行っている/行っていた)飲食店の中でも、今回の延長を期に形はいろいろありますが「要請に厳密には従わない」ことを決めたところがいくつかあります。パターンはいくつかに分かれます。

・営業時間は守っているが酒類を提供している

・予約を限定(少ないところは1組、席を完全に離せるところは複数)して営業している

・表向きは休業しているが常連の予約限定で営業している

いずれも感染対策は万全を期している店ばかりですが、何故このタイミングで営業を再開しているのかを考えてみました。通常言われていることは「経済的に成り立たない」のがその理由ですが、もう一つ大きな理由があります。それに気付かされたのは、あるシェフの言葉でした。

「これじゃあ、もう料理が作れなくなってしまう」

そこでふと気づきました。私は演奏家というより教えることが本業です。ライブなどが中止になって演奏活動ができない状況は続いていますが、それでも自分で練習してレッスンで弾くことはできます。しかし演奏家が演奏活動を完全に停止したらどうなるのか。「自分で練習すればいいじゃない」と思われるかもしれませんが、そういうわけにはいきません。コンサートの緊張感、客席からの反応、そしてそれによる修正は実際にコンサートをやらないとできないからです。

これを料理人に当てはめてみてください。

要請を律儀に守ってきた人ほど、実際に腕を振るうチャンスを剥奪されてきました。しかも、ヴァイオリンの練習と違い、自分で作るためにも材料費もかかりますし、全部を食べるのは無理でしょう。真面目な料理人ほど、自分の築き上げた料理の感覚と腕が麻痺して行くことには耐えられないのではないかと思います。営業したところでどれだけのお客さんが来るかもわかりませんが、それでも少しでも自分の腕をキープしたいと思うのは自然な気持ちだと思います。その気持ちを責めることはできません。

感染がこれだけ拡大していて、しかも検査が先送り(追跡検査も放棄しているので検査件数が上がらない)されている状況では、もはやその辺を陽性者がごろごろしているはずです。その中で飲食だけを厳しく規制することに理があるのか。僕ですら1年楽器を弾くな、と言われたら途方にくれるでしょう。

自分自身が感染を広げる元になるような動き方をするのはダメだと思うのですが、十分に対策を取った店にごく内輪の人たちで行くことは解禁しても良いのかもしれない、と迷っている自分がいます。正解はどこにもないのでしょうが・・・

[ 2021/08/26(木) 19:15 ] 日記, 音楽的主張, | コメント(0)
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