最近、名古屋で行きつけの店ができました。隔週の名古屋のレッスンは、金曜の午後/夜と土曜日です。土曜日は名古屋の生徒と食事をするのが恒例なのですが、問題は金曜日。ひとりで食事ができる(飲める、とも言う)安くてよい店はなかなかありません。金曜日に泊まり始めた当初は、ホテルのそばに王将やマックしかなく、ホテルで寂しくビール、ということもありましたが、昨年の暮れに名古屋の生徒が見つけてくれたお店(一位/http://r.tabelog.com/aichi/A2301/A230102/23000898/)がとっても気に入ってしまいました。
ひとりで飲む(食事、と強がるのはやめよう/爆)、というと、カウンターに座って、大将(おかみ)と話をしながら静かに、というイメージで、そんな店を探していたのですが、ここはキャパの大きな居酒屋です。1Fに8席ほどのカウンターはありますが、後は椅子席で全部で50席ほど。そんな店内は「おやじ」と呼ばれている店主と、厨房の3人の若い男性、サービスをする5人の女性の元気な声が溢れています。
この店は、「おやじ」が集めているこだわりの日本酒がとてもよい。あちこちで日本酒を飲みまくった私でも、飲んだことがない酒が結構あります。珍しい限定酒なども新聞紙にくるまれて冷蔵庫にはいっていたりします。基本的に「こんな味が好き」というと、「次は、これ」と言って選んでくれます。それがこの店の一番の楽しみ方でしょう。料理は「居酒屋料理」ですが、この値段(飲んで食べて3000〜4000円くらい)で出てくるものとしては極めて良いものです。そんなわけで、飾らなく飲むにはとってもよいのですが・・・「そんな広い店にひとりで言って楽しいの?」確かに、ひとりで来ている客はほとんどいません。
この店は、働いている人たちを眺めているだけでも楽しい。完璧なアンサンブルなんです。
働いている女の子は、20歳近辺の若い子が4人。少しお姉様が1人、かな? ところが、みんな「タメ口」(笑)。なんたって、初めていった時から「おっちゃん、楽器持ってんの。何か弾いてよ」ですから(爆)。なのに、とっても気持ちの良いホスピタリティを感じます。その理由は、何回か通ってあれこれと話をして納得しました。
最初に驚いたのは、働いている人が全員、会計ができること。マニュアル全盛の今時、会計を全員ができる居酒屋なんてありません。それも、ポスシステムで注文したものが自動的にわかるわけじゃない。他の店員が書いた伝票でも、見て、こなさないといけません。二十歳そこそこの子たちが、「ふつーに」やっているんですね。要するに、すべての店員が「全部できる(もちろん、料理を作ることと、酒を選ぶことは別)」のです。だから、自分で進んで仕事を見つけることができる。滞っているところがあったらすぐにサポートに入る。お客さんがきょろきょろしたら跳んでくる。当たり前のことのようですが、こんなことができている居酒屋には、長いこと出会っていません。
先日は、とても気持ちの良い経験もしました。ある時、このお店でヨッパライに絡まれたのです。しかも、音楽のことで(苦笑)。「お前は音楽がわかっていない」とかなんとか・・・「運命をやった?版は何だ。ベーレンライター? を、少しはわかってるようじゃないか。それなら、フルトヴェングラーの良さがわかるだろう」という具合です(爆)。まぁ、ヨッパライの戯言で適当にあしらっていたのですが、あまりにしつこいので、「申し訳ありません。僕もプロですので、何も知らない素人さんと議論してもしかたないので、失礼します」と言って、自分の席に戻ってしまいました。
その次に一位に行ったときのこと。サービスをしている女の子たち全員が、私の横を通るたびに「この前はごめんね。でも、おっちゃん大人だったねぇ。株が上がったよ」なんて、声をかけてくれるのです。現場を見ていたのは1人か2人だったと思うのですが、みんなが情報を共有しているのですね。ミーティング、なんていう堅苦しいものをやっているとは思えないのですが(笑)、働いている人たち全員が「私のお店」という意識を共有してるんですね。
「お名前様、いただけますか」なんていう間違った「くそ」丁寧語を使うようなチェーン店の接客とは違う、本物の「もてなし」ですね。少々乱暴ではありますが(笑)
ただ合わせるだけの音楽はアンサンブルではありません。そういう意味で、極上のアンサンブルを聴いているような気分が味わえるのです。
ちなみに・・・例によって、ヴァイオリン、弾きまくってます(爆)次回は29日ですね。