柏木真樹 音楽スタジオ

トップページ > Blog > 日記 > 新型コロナで思ったこと・・・その2
29
Apr.
2020

「新型コロナ」で思ったこと(3)感染拡大を防止し損なった政府の方向性の誤り

現在、日本の感染者数、死者数は他の地域に比べて多い方ではありません。その理由としてはさまざななことが言われています(BCGの接種率、国民性、医療保険の問題など)。さまざまな原因が複雑に絡み合った結果だろうとは思いますが、それにしても現在の状況はあまりにもお粗末です。その原因を作ったのは、明らかに政府です。

武漢で感染が拡大した当初に隠蔽を図った中国政府の責任は重大です。しかしそれと同様に、貴重な時間を浪費してしまったアメリカと日本が、あっという間に感染が広がって収拾がつかなくなってしまった欧州各国に遅れて感染が拡大している理由をしっかりと認識することは大切です。

クルーズ船での集団感染が明らかになってその対応に追われていたために感染が広がることを予想できなかっただけではありません。意図的に感染を増やしてしまう方策を取っていたとしか思えないからです。

1)「これから2週間が瀬戸際です」という2月下旬の安倍首相の発言

「これから2週間」というフレーズは、ほとんどの日本人が聞き飽きているでしょう。安倍首相が3月16日までの外出自粛を要請したために、3月上旬の人出はかなり減少していました。その期間が終わった翌週の連休では、報道されたように多くの人が「終わった」と信じて行動したのです。結果としてそれまでより多くの人が街頭に出たり春を楽しみました。その結果、感染が広がってしまったことは確実です。過ぎてしまったことを言っても仕方がないからかもしれませんが、この発言の問題を指摘する報道がほとんど見られなくなったことは謎です。安倍首相が専門家の意見を聞かずに独断であのような発言をしたのであれば大問題ですが、専門家の意見を聞いてそのように発言したのであれば、専門家会議に大きな問題があったことになります。

2)PCR検査を意図的に制御した日本

韓国やドイツは、積極的にPCR検査を行って感染者(軽症、無症状を含む)をふるいにかけていました。3月上旬の感染者数は日本に比べて両国が突出して多かったのを覚えているでしょう。しかしその後どうなったかは、皆さんもよくご存知なはずです。新たな感染者の発生をほぼ抑え込んだ韓国、軽症者をふるいにかけることで医療現場を守りイタリアやフランスから重傷者を受け入れる余裕を作ったドイツ。どちらも死亡者数、死亡率共に他国に比べて圧倒的に低いことがわかります。その間、日本は韓国からの入国を止める、などの頓珍漢な対応に明け暮れていました。

3月下旬に放送されたNHKの番組で、専門家会議の東北大学の押谷教授は、「日本が感染者数で踏みとどまっているのはPCR検査を抑えているからだ」とはっきり言っています。

(以下、Yahooニュースより引用)

(NHKの男性キャスター)
「日本もPCR検査の数が少ないので見逃している感染者も多数いるのではないかという指摘がありますが?」

(押谷仁教授)
「本当に多数の感染者を見逃しているのであれば日本でも必ずオーバーシュートが起きているはずです。
現実に日本ではオーバーシュートは起きていません。
日本のPCR検査はクラスターを見つけるために十分な検査がなされていて、
そのために日本ではオーバーシュートが起きていない。
実はこのウイルスでは80%の人が誰にも感染させていません。
つまり、すべての感染者を見つけなきゃいけないというウイルスではないんですね。
クラスターさえ見つけられていれば、ある程度、制御ができる。
むしろ、すべての人がPCR検査を受けると医療機関に多くの人が殺到して、その中にはほとんどの人が感染していない、一部の人が感染している。そこで医療機関で感染が広がってしまうという懸念があって、
むしろPCR検査(の数)を抑えていることが日本がこういう状態で踏みとどまっている、そういう大きな理由だと考えられます」

(引用ここまで)

つまり、政府は「PRC検査をできるだけやらないで感染者を表面化させないこと」を目標にしていたのです。私は「日本では感染者が少ないことにして収束させないとオリンピックができなくなる」という危惧から、専門家会議の提言によらずとも検査自体を抑制したい、という意図があったのではないかとすら思っています。

この押谷教授は、4月23日に発言を大きく転換しています。

(引用:yahooニュース)

(押谷教授)

「しかし現在、感染者が急増している状況の中でPCR検査が増えていかないことは明らかに大きな問題です。
このことは専門家会議でも繰り返し、提言をしてきて、基本的対処方針にも記載されていることです。
行政も様々な形で取り組みを進めていることは承知していますけれども、十分なスピード感と実効性のある形で検査センターの立ち上げが進んできていないことがいまの状況を生んでいるというふうに理解しています。
しかし、いくつかの地域では自治体、医師会、病院などが連携して検査や患者の受け入れ体制が急速に整備されている状況です。
そのような地域では事態が好転していくと私は信じています」

(引用ここまで)

この発言は、NHKの番組だけでなくあちこちで引用されました。たくさん引用された理由は、政府がPCR検査を積極的に行おうとしていた、という印象を与えるための情報操作ではないかとすら思います。「どの口が言うか」としか言いようがありません。感染がまだ拡大していない時期(見えていなかっただけかもしれませんが)には「検査をしないでクラスターを叩いていることが感染者を拡大させていないのだ」と検査をさせない方向に誘導しようとしていたのに、4月中旬になって3月下旬以降の感染拡大が明確になると、正反対のことをあたかも自分が前から主張していたかのように言っているのですね。こうして、日本は比較的感染が広がっていなかった貴重な2ヶ月を無駄にしてしまったのです。

私が過去の政府および専門家会議の失態をはっきりさせたいのは、これからどうすべきかをしっかり考えるためです。専門家会議は根拠もなく「8割の人は感染させない」という前提で動いていました。これが誤りであることは、各国の状況を見れば明らかです。どのようなシミュレーションをしたのか、是非明らかにしていただきたい。そしてその誤りを認めて正した上で、感染拡大の実態を掴む努力をしなければならないのです。

新型コロナで思ったこと(4)オリンピックをコロナ禍からの回復を妨げるものにしないでほしい

私はスポーツが大好きです。若い頃は水泳をやっていましたし、草野球なども楽しんできました。見ることも好きで、野球やサッカーにとどまらず、体操やスキー、スケートなども若い頃から見て楽しんで来ました。しかし、2020年のオリンピック・パラリンピック(以下、オリンピックと略称します)を東京でやることには、当初から完全に反対でした。理由はいくつかあります。

2020年のオリンピックの開催地を決める手続きがスタートしたのは、忘れもしない東北の震災直後です。オリンピックをどうしても日本に招致したい人たちは、「復興のためにも日本でオリンピックを!」と主張しました。オリンピックによってもたらされる景気拡大を復興につなげるのだ、ということがその主旨だったのです。しかし私は、当初からそれが全くのでたらめであると思っていました。

震災の復興をしなければならないのは、東京ではなく東北の漁村や山村でした。津波によって壊滅的な打撃を受けた東北の沿岸部や、原発のメルトダウンのために立ち入ることすらできなくなった福島の人たちにとって、東京でオリンピックを行うことに何の「復興支援」があるのでしょうか。実際に東京オリンピックが決まると、オリンピックの関連事業やそれに乗じたホテルの建設ラッシュなどが続き、建築資材の高騰、人手不足などが深刻になりました。確かに景気は向上します。それは株価に影響がある企業業績が上向くことであって、震災でダメージを受けた人たちの助けになるものではありません。そんなことは最初からわかっていたことです。日本で一番優秀な人たちが集まっている(はず)の中央官庁が、こんな簡単な理屈がわからないはずはありません。当初は7000億と言われたオリンピックの準備にかかる費用は、直接的な事業だけで3兆円、関連した周辺事業まで含めるとさらに兆単位で膨らむことになってしまいました。こうしたお金を復興事業に直接注ぎ込むことができたなら、被災者がどれだけ助かったのでしょうか。しかも、私たち全てには復興のための税金を余計に取られ続けているのです。「景気が良くなれば被災地も潤う」という理屈もまかり通っていましたが、今やまともな経済学者は誰も唱えなくなった「トリクルダウン理論」と同じ構造です。形の上で株価が上がり物価が上がることで「経済政策が成功した」と言い張りたい人たちにとっては、オリンピックはとてもおいしい事業なのです。震災後、オリンピックに兆単位のお金を使うことができたなら、東京都がやるべきことはいつかはやってくる東京の直下型地震に対する備えをすることだったと思います。オリンピックの後に地震が起こり、残ったのは新しく建設されたオリンピック関連施設だけ、などという地獄は想像したくありません。「復興オリンピック」ならぬ「復興妨害オリンピック」だったと私が感じているのはこうした理由です。

そしてこの「コロナ禍」です。オリンピックは1年延期されました。オリンピックに向かって努力してきたアスリートたちのことを思うと、ここまできて「中止」はあまりにも酷なことかもしれません。しかし、絶対に聞きたくないことは「コロナ禍から立ち上がるべく景気回復を牽引するオリンピックにする」という戯言です。今回のコロナ禍で、日本の感染症に対する備えがあまりにも脆弱であることがわかりました。オリンピックにお金を注ぎ込む(数千億と言われていますね)くらいなら、医療機関が十分な備えができるようにすることが必要なのではないかと思います。

都民の7割以上がオリンピックに賛成していた事実(2013年)はよくわかっています。私のまわりでもオリンピックに賛成し、楽しみにしていた人はとてもたくさんいます。しかし、敢えて言いたい。復興を妨害したオリンピックを、次はコロナ禍から回復し将来に備えることを妨害するものにして欲しくない、と。

[ 2020/04/29(水) 09:01 ] 日記| コメント(0)
(newer)|blogtop|(older)
(newer)|blogtop|(older)