今日(8日)未明に、Appleから新しいiPadの発表がありました。最近、音楽関係のデジタル化についていろいろと考えさせられているので、どんなものが出るのか、私も興味を持っていました。
私のスタジオは、アップル率100%。私が仕事に使っているMacBook Air、お手伝いに来てくれている生徒が使っているのがiMac、予備機は、私が以前使っていたMacBook、そして、iPhoneです。最近は、コピー機も無線でつないであって、作った楽譜もワンタッチでプリントできる、とてもよい環境になっています。テーマは、「iPadで楽譜を見るようになれるか」です。
現状では、答えはノーです。もちろん、慣れの問題もあると思いますが、まだまだ使い物になる代物ではありません。しかし、将来、デジタル化した楽譜が使い物になる日が来れば、ピットなどで演奏する時にはかなり楽になるでしょう。重たい楽譜を持ち歩かなくてすむようにもなるかもしれません。
使い物にならない理由はたくさんあります。書き込みの問題、譜めくりの問題、そして根本的なのは、頭の中に楽譜を取り込む作業が、iPadのような電子機器では「情報が少なすぎる」のです。これは、スコアを使っていると痛感します。「このあたりにある」「このくらいめくる」という勘に頼った作業がとても多いからです。「ページをまとめてめくる」ときには、「何ページめくる」とは意識しません。「このくらい」という、経験値によって得られた「勘」が頼りになるのです。ページで検索するような場合には、iPadのようなものが便利かもしれませんが、頭はもっと「ファジーに」働いているのです。ですから、それを電子機器で再現するのは難しい。
しかし、「どんな新しいiPadがでるんだろう」と考えているうちに、いくつかアイデアが出てきました。
iPadが楽譜として使い物になるための「表面的な条件」としてまず思いついたのは、
1)非接触型のセンサーを優秀なものにして、譜めくりが楽になること
2)複数のiPadを並べて、楽譜の配置を自由にできること
の2つです。もちろん、これでも、使い方は限られています。楽譜に書き込む、消す、という作業は、まだまだ現在のiPadでは無理だと思いますが、そのうちできるようになるかもしれません。ペンタブレットのようなものがさらに優秀になれば、それほどストレスなく使える日もそう遠くないかもしれません。でも、そのことが「紙の楽譜をiPadに置き換える」積極的な理由にはなりません。しかし、上に挙げた2つは、電子機器ならではの使い方を提示してくれるかもしれません。
オーケストラやアンサンブルでの譜めくりを想像してみて下さい。苦労している人も多いでしょう。非接触型のiPadが2つ以上並んでいて、手をかざすだけでめくれたら、とっても便利です。もちろん、複数のiPadを並べて、楽譜が送られるようにすることも必要でしょう。
楽譜の編集も楽になりますね。楽譜ソフトと連動するようになれば、スタジオ録音などではとても便利なツールになる可能性があります。
しかし・・・
やはり、私の想像力では、出版譜より使いやすいiPadの使い方は出てきませんでした。あっと驚くようなものが登場するのか、それとも、人間の感覚には、どうしてもアナログのものの方が合うのか、これから、新しい文化のせめぎ合いが始まるのかもしれません。