柏木真樹 音楽スタジオ

トップページ > Blog > コンサート > 91歳のチェロ奏者/青木十良リサイタル
20
Jan.
2007

1915年生まれの「現役」チェリスト、青木十良さんのリサイタルを聞いた。チェンバロの鷲崎美和さんとのデュエットで、バッハのガンバソナタ3曲というプログラム(19日/浜離宮朝日ホール)。

90歳を超えてまだ現役、しかも、リサイタルをやるということ自体で、驚異的なことだと思いますが、チェロにかける情熱が十分に伝わってくるステージで、感銘を受けました。もちろん、技術的な衰えは隠しようがありませんし、カウントも甘く、あちこちが短くなったり伸びたり、という「事故」はありました。この値段(5000円)のステージとしてどうか、という意見も当然あるかもしれませんが、私にとっては、いろいろと勉強になる演奏会でした。

何歳まで楽器を弾き続けられるか、というのは、50に近づいた私にとっても、大きなテーマです。青木さんを見ていると、身に付いた運動(例えば、左手が先行すること、ポジション移動で手を伸縮させて最短の運動を求めること、など)は、歳をとっても忘れるものではないことがよくわかります。また、耳も、聴力は弱まるのでしょうが、音程を判断する感覚は、意外に衰えないことがわかります。加齢につれて衰えること/できることを考えながら、できるだけ元気で楽器を演奏するにはどうしたらよいか、ということについて、とても興味深いものでした。

演奏は、どれも青木さんの思いが伝わるものでした。バッハを聴いている、というより、75年間に及ぶチェロ奏者としての歴史を、楽譜にのせて語っているかのようでした。

アンコールの最後に、「鳥の歌」が演奏されました。チェンバロの伴奏でこの曲を弾くのは初めてですが、ピアノより素敵かもしれません。青木さんも、おそらく何回となく弾いて来られた曲でもあるでしょう、味のある、とても素晴らしい演奏だったと思います。「この曲は、90過ぎてから弾かないとダメなのかしら」なんていう意見もありましたが(笑)、聞いていたほとんどの方が、何かを感じられた演奏だったのではないかと思います。

チェンバロの鷲崎さんは、青木さんを的確にサポートして好演だったと思います。息をのむシーンが何回かありましたが、青木さんが思いの通りに演奏できるように、という、優しさ溢れる競演でした。

[ 2007/01/20(土) 00:00 ] コンサート| コメント(0)
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