柏木真樹 音楽スタジオ

トップページ > Blog > クレモナレポート > モンテヴェルディ&カラヴァッジョ・・・ヴァイオリン博物館特別展

 5月のクレモナ訪問で、ヴァイオリン博物館の「モンテヴェルディとカラヴァッジョ特別展」を見てきました。博物館職員の安田恵美子さんにガイドをしていただき、じっくりと見ることができました。実は、今回のクレモナも思いの外忙しく、「9月までやっているなら9月にしよう」と思ったのですが、特別展は7月23日まで。会食後の飲酒モードで失礼いたしました(汗)

クレモナ生まれ450歳のお方。市の中心部にある「ローマ広場」の中にあります

クレモナ生まれ450歳のお方。市の中心部にある「ローマ広場」の中にあります

 

 ご存知ない方のために、簡単に説明しておきましょう。

 モンテヴェルディ(Claudio Giovanni Antonio Monteverdi/1567 – 1643)はクレモナ生まれの音楽家(ガンバ奏者、歌手、学師長、作曲家)で、イタリア・バロックの先駆者とされています(クレモナには、市の中心部にある公園(ローマ広場)にモンテヴェルディの胸像があります)。制約が多かった中世の対位法に対して、詩の表現を音楽にダイレクトに反映してより感情に結びつけた表現形態を模索し、新たな表現形式を世に問うたのです。特に劇中で一人で歌う形式は、3、4重唱がメインであった中世の音楽に比して、自由な表現の可能性を広げました。この頃、イタリア各地で同じようにルネサンス音楽からの進展が図られてました。そしてそれが歌以外の音楽にも影響が広がり、バロック音楽の隆盛につながったのです。

 カラヴァッジョ(Michelangelo Merisi da Caravaggio、1571 – 1610)はこの時期の画家で、主にイタリア南部を中心に活動しました。中世のイタリア絵画がバロック絵画に変化する過程で重要な役割を果たした芸術家です。今回展示されている「リュートを弾く若者」はカラヴァッジョの代表作の一つです。

ご参考までに、博物館の公式案内も載せておきます。

「音楽の町クレモナが生んだ天才は、ストラディヴァリだけではありません。音楽史上もっとも重要とされる作曲家の一人であるクラウディオ・モンテヴェルディは、450年前のクレモナに生まれました。それまでの音楽に新風を吹き込み、ルネサンス音楽からバロック音楽への変遷に大きく貢献した彼の生誕450周年を記念し、ヴァイオリン博物館特別
展「モンテヴェルディとカラヴァッジョー奏でられる楽器、描かれる音楽ー」展が開かれます。モンテヴェルディの最初のオペラ「オルフェオ」(1607)に使用された珍しい歴史的楽器群及びカラヴァッジョの代表作「リュートを弾く若者」の展示により、博物館展示室一体がバロック・オペラの森と化します。どうぞ一度足をお運びください。」

 ヴァイオリン博物館の常設展は、アマティ、ストラディバリ、グァルネリ、などのクレモナの名匠の楽器、ストラディバリが製作に用いた図面や道具などの展示がメインですが、それ以外にも、トリエンナーレ(3年に1度のクレモナでの楽器コンクール)の楽器の展示、中世の楽器やレプリカなど、たくさんの展示物があります。最近、ヴァイオリンの製作を実際に見てもらうために工房を擬した部屋も作られていて、実際に楽器製作をしているところを見ることもできます。工房を訪れても、なかなか製作している現場が見られることは珍しいので、興味があれば楽しいでしょう(クレモナのガイドをお願いすると、実際に製作過程を説明してもらえるツアーを組むこともできるようです)。これ以外に、毎年9月からは「ストラディバリ・フェスティバル」が行われ、目玉になる楽器(昨年は「メシア」)の展示や多様なコンサートなども行われます。今回は、モンテヴェルディ生誕450年のメモリアルイヤーとして、展示とコンサートが行われているのです。

アンドレア・アマティ1570年製のヴァイオリン

アンドレア・アマティ1570年製のヴァイオリン

1580年のガスパロ・ダ・サロのコントラバス。フラッシュがたけないので見にくくてごめんなさい

1580年のガスパロ・ダ・サロのコントラバス。フラッシュがたけないので見にくくてごめんなさい

 

 

 

 展示されている楽器は、モンテヴェルディが活躍していた当時のオリジナル楽器(弦楽器だけでなく管楽器などもあります)がメインです(各楽器については、写真のキャプションで簡単に説明しておきます)。ガスパロ・ダ・サロ(Gasparo di Bertolotti、1540 – 1609/現在のヴァイオリンの形をほぼ決めたとされる作家。ヴィオラ・ダ・ガンバやコントラバスを主に製作し、少数の楽器が残されている)のコントラバスなどが特に見ものだと思います。

 

 

 

 

ジロラモ・アマティの1610年製、バス・ヴィオラ・ダ・ガンバ

ジロラモ・アマティの1610年製、バス・ヴィオラ・ダ・ガンバ

1615年、アマティのヴィオラ。別記事のコンサートで使われた楽器だと思います。アジャスターが付いてる(笑)

1615年、アマティのヴィオラ。別記事のコンサートで使われた楽器だと思います。アジャスターが付いてる(笑)

1600年頃のチタローネ。音を聞いてみたい!

1600年頃のチタローネ。音を聞いてみたい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

16世紀のトロンボーン

16世紀のトロンボーン

16世紀の楽器です。なんだかわかりますか?「corno]ですから今の言い方なら「ホルン」ですね

16世紀の楽器です。なんだかわかりますか?「corno]ですから今の言い方なら「ホルン」ですね

ダ・サロのヴィオラ。1609年製

ダ・サロのヴィオラ。1609年製

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラヴァッジョの「リュートを弾く若者」

カラヴァッジョの「リュートを弾く若者」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 以前の私ならありえなかっただろうことですが、これらの楽器をじっくり見ていると、バロック時代の音楽が立ち上がってくるような錯覚を覚えます。力強くキャラ立ちした現代の音楽ではなく、どこか懐かしい響きの音楽が頭に流れてきます。そんな気分にさせられる展示でした(BGMはいただけなかった・・・)。まだまだたくさんありましたが、このあたりで。

 博物館関連では、もうひとつ、のちほど記事を取り上げます。

 今年のストラディバリ・フェスティバルの詳細はまだ発表されていませんが(イタリア時間なんです/汗)、9月に訪問した時には、また新しい展示を楽しめるのではないかと期待しています。

[ 2017/06/10(土) 09:33 ] クレモナレポート, ヴァイオリン, 楽器| コメント(0)
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