柏木真樹 音楽スタジオ

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Mar.
2012
2012/3/1 Thu. 18:00
Category:音楽的主張

音楽業界、特に、音楽に関わる出版の不況が深刻です。金融不安、東日本大震災、欧州の金融危機など、経済状況が悪いのは音楽に限ったことではありませんが、それでも、ここ1年ほどの状況は目を覆うばかりです。

音楽之友社で、会社側と従業員の間で、退職金に関して裁判沙汰になっていることは、ご存知の方も多いと思います。音楽之友社にはそれなりの特殊事情もあるようですが、それにしても、どうあがいても勝てそうにない裁判に持ち込まざるを得ない音楽之友社の状況は、容易に想像がつきます。

ネットの普及で出版物が売れなくなった、という話はよく聞きます。確かに、インターネットというツールが出版物に取って替われるものも少なくないでしょう。電子書籍などは、ある一定のシェアを取っても不思議ではありません(私は、どうもダメですが・・・)。しかし、音楽之友社の出版物のなかには、電子化できないものも少なくありません。特に、楽譜は、しばらくは印刷物でなくては役に立たない状況が続くでしょう。

楽譜が売れなくなった原因のひとつに、ネットに氾濫する無料(ないし、安価な)楽譜の存在もあります。コピーが簡単にできるようになっただけでなく、元になる楽譜ですら無料で(ないし、極めて安価に)手に入るようになっては、出版社はたまったものではないでしょう。ネットで楽譜を無料で手に入れて、付加価値がある校訂部分は誰かのを写す、そんなことが当たり前になったら、楽譜の出版そのものが成り立たなくなります。現代まで音楽文化を支えて来た出版社がなくなってしまったら、と考えると、哀しくなります。

楽譜だけでなく、音楽書も厳しいようです。それだけでなく、音楽を生業にしている人たちにとって、過去に経験のないような厳しい状況が続いているとも言えます。もちろん、音楽大学が多すぎるという問題もあるでしょうが、「音楽で食べる」ことは、これまで以上に厳しいものになると言わざるを得ません。

職がない人が溢れている不況の時代に音楽で「喰う」ことなど贅沢なのかもしれませんが、それでも、音楽が人々に与えるものの大きさを考えると、なんとかこの時期を乗り越えて欲しい、乗り越えたい、と思うばかりです。

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[ 2012/03/01(木) 18:00 ] 音楽的主張| コメント(0)
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