朝、新聞を見たら、ピアニストのペルルミューテルの訃報が載っていた。98歳だったそうだ。
ペルルミューテルを、私は一度だけ聴いたことがある。もう30年近く前になるが、N響の定期演奏会に登場し、ラヴェルの左手のための協奏曲を弾いた時である。演奏は素晴らしいもので、「ラヴェルの直弟子」という紹介と共に、はっきりと記憶に残っている。あの時すでに70前後だったんですねぇ・・・
たった一度ではあるが、ペルルミューテルの演奏を聴くことができたのはとても幸運な事だったと思う。ラヴェルという大きな歴史に、ちょぴっとだけ触れることができたのだと感じる。
こんな話題を書いてみたのは、昔、両親の「演奏会プログラム」を見つけたときのことを思い出したからだ。彼らは、それこそ「食費を倹約してでも」演奏会に通ったらしい。段ボール二つ分のプログラムは、まさに宝の山だった。大阪~東京と家が変わったので、初めの頃は関響(大阪フィルの前身)のものが多いのだが、次第に当時来日した大家達の物が増えてくる。コルトー、シゲティ、ボスコフスキーやヒンデミット指揮のウィーンフィル・・・そこには、大家達が確かに存在した証があった。
最近、「歴史だなぁ」と感じる演奏が少なくなったように思うのは気のせいだろうか。私が聴いてきた大家達・・・オイストラフ、シェリング、リヒテル、ケンプ、ホロビッツ、ミケランジェリ・・・うーん、名前を思い出してみても、「素晴らしい演奏」ではあっても、「歴史だ」という感じがしない。単に「古い物はよく見える」だけなのかもしれないが・・・何故だろう? これから20年も経てば、やはり「歴史」と感じられるようになるのだろうか・・・
心よりご冥福をお祈りします。