柏木真樹 音楽スタジオ

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15
Oct.
2006
2006/10/15 Sun. 00:00

春の発表会に出られない人が多く、秋にも演奏会をやる必要が生じたために、ことしから年に二回の発表会を行うことになりました。秋のシーズンまっただ中で、3年続けて春の発表会で使っているホールが取れず、私の地元の公共施設のホールで、比較的こぢんまりしたかたちで行うことになりました。当初出演を予定していた生徒が、やはり6人ほどでられなくなり、春とはうってかわって短め(それでも3時間半ですが・・)のコンサート。例によって、アズールと環SQも演奏しました。

「お客さん、いないだろうなぁ」と思っていたのですが、ふたを開けてみれば、どうしてどうして、出演していない生徒と出演者の友人たちで、用意した40ほどのイスが足りず、二度も増やすほどの方が席を埋めてくださいました。

会場は、通常、オーケストラなどの練習に使うフラットスペースですが、中央の壁寄りにステージを配置し、周りを徴収が囲むような形で行ってみました。いつものようなステージではなく、客席がすぐそばにある形になりますが、ステージ上と違った緊張感があり、とても勉強になったと思います。

出演した生徒さんたちは、どなたも大きな収穫があったように思いますが、私は・・

いつもいい訳ばかりなのですが、今回は特にひどい状態(前日の日記を参照)。メンバーは「弾くのをやめたら?」と言ってくれたのですが、やはりどうしても弾いている姿を見せるべきだと思って、恥を忍んで演奏することに・・

体調の良い時に、プロコフィエフは是非、リベンジをしたいと思います。

*****プログラム*****

1)プレイエル 6つの二重奏op.59より第6番        ×××/2nd ×××

東京グリーン交響楽団のトレーナーをお引き受けしたご縁で、学生のお弟子さんが二人、昨年加わりました。×君は、大学に入ってからヴァイオリンを始めた「レイトスターター」です。基本的なことがかなり欠けていたので、初歩から立て直しをしているところです。よく考えて練習するのですが、まだヴァイオリンを弾く感覚が自分のものになっているとは言えません。学生でいられる間に基本ができると、後がとても楽になるので、ここしばらくが勝負だと思います。今日は、ステージを経験していただくために、比較的易しい曲で初登場です。

 

2)マザース 小さな二重奏曲集 op.38より第4番     ×××/2nd ×××

レッスン2年目の×さん。この一年間で、びっくりするくらいできることが増えてきました。「もうこれが限界」という嘆きが口癖ですが、その「限界」は日々進化しているようです。自分でさまざまなことを考えて毎日練習している×さんは、先月のアンサンブルセミナーでは、初めてカルテットや弦楽合奏を経験しましたが、たくさんの「反省点」をレポートにしてくれました。やるべきことに自分で気がつくことは、練習が本当の意味で自分に取って役に立つものになる第一歩です。今の気持ちを忘れず、練習を積んでほしいと思います。

 

3)マザース 6つの二重奏op.46より第2番       ×××/2nd ×××

講習会にいらしたことがご縁で、レッスンが始まりました。レッスン2年目に入り、発表会、初登場です。やる気は十分、よく考えることもできるのですが、やや慎重すぎるように思います。できないことを理解することは大切ですが、できるようになったことを正しく把握することも大切。日々の練習でも、前に向く姿勢が必要です。自分を前向きに評価できるようになれば、少し違った進歩の仕方をするのではないかと思います。

 

4)バッハ「ブーレ」(無伴奏チェロ組曲より)             ×××

今回、発表会に出演する予定ではなかったのですが、ご自分の結婚披露パーティーでこの曲を弾くことになり、度胸付けのために、急遽エントリーしました。普段、私の事務作業を手伝ってくださっているのですが、作業中に他の人のレッスンを見ることになり、とても勉強になっているようです。大学に入ってからヴァイオリンを始めたので、オーケストラ歴は長いのですが、きちんとしたレッスンを受けるのは、私がほぼ初めて。基本の立て直しを一年がかりでやって、最近、ようやく「弾きたい」と言っていたデュエットを弾き始めたところです。

 

5)フランク ヴァイオリンソナタ イ長調         ×××/Pf ×××

一昨年、ベートーヴェンの「スプリングソナタ」を全曲弾いて、「大変だったぁ」と言っていたのですが、今年はさらに大曲に挑戦です。あまりに音が小さかったために、ボウイングのシステムを全面的に変更。その成果で、少しずつ音がしっかりしてきました。所属しているオーケストラでも「音が聞こえるようになった」と言われて、少し喜んでいるところです。まだまだ曲になると、自分の気持ちほどはしっかり音が出せないのですが、この調子なら、あと2、3年で、立派な音がするヴァイオリン弾きになると思います。

 

6)ホルスト「セント・ポール」組曲              ストリングス・アズール

  二つの弦楽のための小品「PASSACAGLIA」「Touch her soft lips and part」 ウォルトン

アズール始まって以来の、年に二回目の「本番」です。今までは、八ヶ月以上かけて一曲を仕上げていたのですが、今回は実質四ヶ月です。5月のエルガーがとてもよい演奏だったので、メンバーにはそのイメージが強く、「えー、もう本番なのー」という雰囲気に満ちています。しかし、このような体験も、これからアズールが成長するためには必要なことでしょう。曲は、ホルストがSt. Paul女学園のために書いたもので、シンプルで、技術的には比較的困難な箇所が少ないものです。練習が始まった後、なんとメンバーの×××さんのお姉さんがこの学校に通っていたことが判明。練習では、思いがけず面白いお話を聞くこともできました。ウォルトンの二曲は、Sさんが持ってきてくださったものです。少しの間、イギリス音楽の雰囲気をお楽しみいただけたら、と思います。

 

7)ホーマン バイオリン教則本より           ×××/2nd ×××

昨年ヴァイオリンを始めてから、転職や引っ越しなど、思いがけず多忙になり、練習時間が取れないと悩んでいる×さんですが、無理をせず基本的なボウイングをみっちり練習した成果で、指導している私や×がびっくりするような大きな音がでるようになりました。音楽的な経験が全くないため、できるだけ人前で楽しく演奏することを経験してほしいので、5月に続いて、今回もエントリーしてもらいました。Sさんのレッスンでは、いつも笑いが絶えず、とても楽しそうにしていますが、今日も、思い切り楽しんでほしいと思います。

 

7)プレイエル 6つの二重奏op.48より第一番      ×××/2nd ×××

昨年、私のウェブサイトを見て、レッスンにいらっしゃるようになりました。先生を選ぶのにとても慎重で、最初にお話をしている時は、私が試験を受けているような気分でした(笑)。普段の練習もとてもしっかり考えて行っているようで、お話ししたことをきちんと理解していただいている実感があります。音楽の趣味も多彩で、自分の好みもハッキリしています。私としては、もっと「芸風」を広げてほしいと思っています。今日は、初登場で、初めての先生とのデュエット。どんな演奏を聞かせていただけるか、楽しみです。

 

8)プレイエル 6つの小さな二重奏曲集op.23より第6番 ×××/2nd ×××

春は、バッハのコンチェルトを弾いた××さんですが、今回も「半ば強制的に」出演していただくことにしました。理由は、「練習は好きだけど、本番が嫌い」という××さんに、できるだけたくさんのステージを経験していただきたいからです。音楽は、自分で完結するものでもあり、他者との関わりを持つものでもあります。その両面の楽しさ、喜びを、××さんにもどうしても持っていただきたいのです。

 

9)ブラームス ヴァイオリンソナタ第1番より第一楽章   ×××/Pf ×××

なかなか発表会に出られなかった×さんですが、忙しい仕事をおして、今回はなんとか出演にこぎつけました。練習する時間が絶対的に足りないので、新しいことが定着するのに時間がかかってしまうのが、現状では残念なところです。好奇心旺盛、意欲もあるので、これからは、練習の方法や取捨選択を上手にして、持っている「良いところ」を十分に活かしたヴァイオリンが弾けるようになってほしいと願っています。

 

10)ヴィニアフスキー 「エコール・モダン」より第5番、作品18-4 ×××

ヴァイオリニストを目指している×君ですが、無茶苦茶に弾き散らかしていた状態から、少し、考えながら練習ができるようになってきました。指のまわりは天下一品なのですが、その他のことが全くできていなかったのです。相変わらず「格好いい」曲を弾きたがっているのですが、そろそろ、じっくりと音楽を作る勉強を始める必要がありそうです。二曲とも、ヴィニアフスキーがトレーニング用に書いた曲ですが、華やかで、楽しいものです。

 

11)ハイドン 弦楽四重奏曲ニ短調 作品76-2「五度」
    1st.Vn ××× 2nd Vn ××× Va ××× Vc ×××

何事にも積極的な×さんが、「ハイドンの『五度』をやりたい」と言ってきたのが4ヶ月ほど前のこと。当初は、ベテランの生徒に1stを弾いていただく予定だったのですが、「どうせならレッスンにしたら?」という提案をさせていただいて、×に1st.を弾いてもらうことにしました。Vaの×さんとVcの×さんは、アズールのメンバーでは珍しい「ベテラン組」です。熱心に練習を繰り返していましたが、今回は、私はレッスンをしませんでした。どのように仕上がっているか、私も楽しみにしています。

 

12)プロコ 環弦楽四重奏団

チェロの×と私が、プロコフィエフやバルトークが好きなので、難曲にチャレンジです。曲は比較的シンプルに書かれて、随所にプロコフィエフらしさが感じられます。練習してみると、想像以上に難しく、普段2、3回の練習で曲を更新するのですが、結局5回の練習になりました。しかし、練習のテープを聴いてみると、実に音程が悪いのです。平均律的に音程をとらなければならないところが、ほとんどできていない状態でした。各人が自分の中で音程を完結させようとすると、この時代の曲は絶対に合わないのです。さて、現時点で残された練習はあと一回ですが、当日までにどこまでできるか・・

== ごあいさつ ==

5月の発表会に出られない生徒が続出したために、秋にも発表会をやる必要があると感じて行うことにした今回の発表会ですが、結局、春に出られなかった生徒さんのほとんどは、今回も出演できなくなりました。仕事が忙しくなる年齢層の生徒が多いので、ある意味でしかたがないのかもしれませんが、人の前で弾くこと、曲を仕上げることを経験できないことは、とても残念です。そうした生徒のためには、今後、何らかの方法を考える必要がありそうです。

前半は、普段レッスンで弾いていただいているデュエットが並びました。私は、特に音楽的な経験値の少ない人たちには、レッスンでできるだけヴァイオリンのデュエットを弾いていただくようにしています。とてもクラシックな教授法で、各種の教則本が登場してからは、あまり使われなくなった方法ですが、どうしても必要なものだと思っているからです。今回並んだ、プレイエルやマザースは、こうしたデュエットの練習曲をたくさん遺しています。その多くは、楽曲の形式を学ぶと同時に、レヴェルに合わせた技術を要求するもので、とても使い勝手が良く、楽しい/美しい曲も多いので、皆さんに弾いていただいています。

今回は、こぢんまりとしたコンサートになりましたが、来年以降、まだどのようなものになるのか、楽しみにしていただけたらと思っております。

[ 2006/10/15(日) 00:00 ] コンサート, レッスン| コメント(0)
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