柏木真樹 音楽スタジオ

トップページ > Blog > クレモナレポート > 2024年のクレモナ・ムジカ(モンドムジカ)

例年通り、9月の最終日曜日を含む金曜日からの3日間、クレモナのFierra di Cremonaで欧州最大級の楽器展示会が行われました。2015年に初めてクレモナムジカを訪れてからコロナ期間中以外は毎年通っていますが、この10年間でかなり様変わりしています。

entrance

毎度恒例の初日の列。ここからは大きさはわかりませんがとても広い展示場が二つ使われています

モンドムジカの前身はクレモナ市内で行われていた弦楽器製作者の展示会ですが、次第に規模が大きくなり、ピアノやギターなどの展示も行われるようになり、近年は管楽器の展示も多くなりました。結果として弦楽器の展示会という性格は薄れてしまいましたが、それでもメインの会場にはクレモナのみならず欧州各地から弦楽器の製作者や材料や周辺のパーツ(木材、肩当てや顎当て、ケースや弦、松脂などなど)の業者などもたくさん出店しています。初めて来た時はその規模に驚いたものですが、全体の規模は大きくなったものの、昨年、今年は「驚き」が少なかったように思います。自分が慣れてしまった、ということもありますが、毎年のようにあった「知らない製作者(クレモナ以外)」に出会う驚きもやや減少してしまったのかもしれません。

そもそも10年前は春のドイツのミュージック・メッセ、アメリカの展示会、そして日本の弦楽器フェアが大きな規模の展示会でしたが、ちょうどその頃に始まった上海の展示会が規模が大きくなり、イタリアの製作家も中国への出店を重視するようになりました。そんなことも影響しているのかもしれません。

とはいえ、3日間にわたって行われる展示会の時期は、Fierra(クレモナの中心から車で10分ほど)だけでなくクレモナ市内もお祭り騒ぎ。空き店舗を借り上げて出店する製作者(集団)がたくさんあったり、街中にピアノが置かれていて自由に弾けたり、ローマ公園では出店(屋台・・といっても車ですが)があったりと、いやでも盛り上がります。ホテルは1年前にはほぼ埋まり、アパートやBBも直前では全く予約できないだけでなく、高い。毎年止まったら翌年を予約する、ということを繰り返してきました。

古いピアノやオルガンの展示も毎年のようにあります

古いピアノやオルガンの展示も毎年のようにあります

piano2 piano3

piano5

 

 

 

 

 

展示会場に入って最初は管楽器や古楽器、電気楽器などが展示されています。古楽器を展示している男性に近づいて展示物を見ていると、「日本人か? なんとかハチっている管楽器を知っているか?」などといくつか質問されました。持っていないので集めたいそうですが、実は昨年同じ人に同じ質問をされています。それを指摘すると「そうだったっけ?ごめん」と言われました。僕より若いと思うんだけどなぁ(苦笑)というより、前の年に答えたことを覚えてないんかい(笑)

lenalive1

ライブ会場での一コマ。横山レナさんとチェロ、エレキギターのトリオ。お客さんは大盛り上がり

最初の展示場を抜けると中庭があります。ライブ用に作られたスペースがあり、サンドイッチ(パニーニ)やスイーツ、ジェラートやビールなどの飲み物の屋台があり、昼をすぎるとどこも大行列。中庭のベンチとテーブルは空きを見つけるのが一苦労です。

最終日には、横山令奈が参加したライブがありました。エレキギターが主役の演奏でしたが、3人ともノリノリでお客さんは大喜び。途中でドローンが飛んできて撮影していました。おそらくどこかでライブを中継していたのではないかと思います。

中庭を抜けるとメインの展示会場です。弦楽器の製作者、製作者の団体、楽器屋さん、材料の木材を専門に売っているところ、ケースのメーカー、松脂や弦を作っているメーカー、楽書や楽譜を売っているブースなどがズラーと並んでいます。奥にはイベントスペースもあり、時間ごとにさまざまなイベント(演奏や講演)をやっています。

最初は全体を見て回って、旧知の製作家のブースの位置や見たことのない製作家や企業のブースがないかをチェック。本気で試奏するのはその後です。まずはリボー二のケースを買いたかったので新作柄などをチェック。見知った店員さんに「これがほしい」と声をかけました。前年は初日の早い時間に行くと展示品を売ってもらう予約ができたのでそのつもりで聞いてみると「今年は売れるものがない。展示されているのは販売先が決まっているものばかりです」と言われてしまいました。気になる新作柄(さすがイタリア、おしゃれです)が欲しかったのですが「注文してくれれば送るよ」。結局発注だけして、「今度来た時に買うね」と予約をしました。

ALI(Associazione Liutaria Italiana)のブースです。知っている製作家さんの楽器がたくさん。一台ずつ試走しましたが、前年からかなり変化した楽器もあって楽しい

ALI(Associazione Liutaria Italiana)のブースです。ALIは故ジョバッタ・モラッシーが中心となって設立された団体で、ジョバッタの薫陶を受けた製作家が中心にイタリア全土に会員がいます。知っている製作家さんの楽器がたくさん。一台ずつ試走しましたが、前年からかなり変化した楽器もあって楽しい

 

consorzio

コンソルツィオ(Consorzio Liutai “Antonio Stradivari” Cremona)はクレモナ最大の製作者団体で50人以上の会員がいます。以前は商工会議所所属でしたが現在は独立して運営されています。中心部のストラデイヴァリ広場の一角にショールームがあります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

tonarelli

最初にクレモナに来た時からお世話になっているDanielle Tonarelliさん。2016年の「クレモナの製作家の楽器を使ったコンサート」では楽器をお借りして弾かせていただきました。売れっ子製作者ですが楽しく楽器談義をさせていただいています

trabucchi

トラブッキ(Stefano Trabucchi)さんもクレモナに通い始めてから大いにお世話になった製作者です。タイ王女のために青いヴァイオリンを製作したことは日本でも報道されたので目にした方も多いのではないでしょうか。工房の地下には古い素敵な試奏スペースがあります。

 

 

 製作家のブースはお世話になっている方を中心時じっくりとお話をしました。お世話になっているといえば、松下さんやお友達のPistoniさん、生徒が楽器を買ったLevaggiさんやFerronさんなどですが、いずれもモンドムジカにブースを出す習慣がない(そもそもオーダーがいっぱいで売る楽器がない笑)ので、会場では松下さんとレヴァッジさん以外にはお会いできませんでした。特に今回は松下さんと飲むチャンスがなく、とても残念でした。次回こそはピストーさんとともに自家製のラーメンを食べさせたい(笑)

 

 

そのほかにもたくさんの製作家のブースにお邪魔して試奏したりお話をしたり。全部お見せできないのが残念です。

Massimo Ardoriと根本和音くんの師弟ショット。Ardoriさんは最初の年からお世話になっている製作者で和音くんはずっと楽器を見てきました。3年前にトリエンナーレでゴールドを取って、もう立派なマエストロ。Ardoriさんたち(製作学校の先生たち)のブースの前で

Massimo Ardoriと根本和音くんの師弟ショット。Ardoriさんは最初の年からお世話になっている製作者で和音くんはずっと楽器を見てきました。3年前にトリエンナーレでゴールドを取って、もう立派なマエストロ。Ardoriさんたち(製作学校の先生たち)のブースの前で

 

会場では出展していない製作家ともよく出会います。写真のLandaさんはナポリ出身。南部出身とは思えない物静かなgentleman。修復の専門家でもあります。奥様はバロックの楽器や弓を作っています。

会場では出展していない製作家ともよく出会います。写真のLandaさんはナポリ出身。南部出身とは思えない物静かなgentleman。修復の専門家でもあります。奥様はバロックの楽器や弓を作っています。

 

会場には楽器だけでなくケースやグッズのブースもたくさんあります。

クレモナの楽器ケースの工房、Maurizio Riboniで見かけた新しい柄。買いたかったのですが「今回は無理」と言われて残念。オーダーしておきました。

クレモナの楽器ケースの工房、Maurizio Riboniで見かけた新しい柄。買いたかったのですが「今回は無理」と言われて残念。オーダーしておきました。

bespoke

大ヒットしている松脂メーカーBespoke のオーナーと。彼が最初にクレモナに来た時に同宿で(面白いエピソードもありました)その後、日本の代理店が決まってからまとめて購入したこともあります。今回は新製品についての詳しい説明を受けました。高いですがなかなか良いものでした。しかし・・最初(2016年かな)は間借りだったのに今やブース二つ分の展示。どれだけ売れてるんだろう(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今年は初日と最終日の二日間だけ行きましたが、やはりとても楽しいですね。ただ、全体的にお客さんが少ないように感じたのは気のせいでしょうか。ある種の「熱気」があまり感じられませんでした。その分、ゆっくり回れたのですが。

 来年も楽しみにしています。

 

[ 2024/10/29(火) 20:32 ] クレモナレポート, ヴァイオリン, 楽器| コメント(0)
(newer)|blogtop|(older)
(newer)|blogtop|(older)