9月16日から10月1日まで、クレモナに行ってきました。たくさんの出会いがあり、今回も多くの出会いと収穫がありましたが、いくつかに分けてレポートしようと思います。写真の都合(自分で撮れかなったものはまだ手元にありません)ので、あるものから順にレポートします。
最初は、2017年のモンドムジカ(Cremona Musica International Exhibitions)http://www.cremonamusica.com/en/la-manifestazione/のレポートです。
クレモナ・モンドムジカは、もともとは市内で行われていた製作家の展示会だったそうですが、現在はクレモナ市の大きな展示場(普段は食肉、食用牛などの取引にも使われている)で行われ、弦楽器だけでなくピアノや管楽器の展示も増えています。クレモナの製作家の楽器の紹介、という趣旨よりも、見本市の性格が年々強くなり、弦楽器以外のブースが増え、国内外の楽器商のブースもたくさんあります。その辺りの話は、昨年のレポートにも書きましたのでhttps://maki-music.net/blog/201609mondomusica/割愛。知り合いの製作家が増え、楽器製作にかかる話をする時間も長くなったので、昨年は1日で回ったのですが、今年は1日半でも足りませんでした。
モンドムジカにブースを出している製作者は、ある程度の値段がついているベテランの製作家、大きな工房、楽器商を兼ねている「やり手」が多いのですが、中堅の製作家もちらほらと混ざっています(松下さんやPistoni、Levaggiさんなどのベテランや人気作家のFerronなどは出ていません)。私としては、クレモナ市内に工房があってよく訪れる製作家のブースよりも、クレモナ以外(国外含めて)の製作家や楽器商、変わったグッズなどの方が興味がありますが、時間が取られるのはやはり知り合いの製作家のところです。相変わらず「コンコン」をやったり、感想を述べてセットアップをやり直したり、という作業にも時間がかかるからです。
クレモナで有名な作家さんのブースを少し紹介しましょう。私が一緒なのはご愛嬌、ということでご容赦ください。
最初は、Stefano Trabucchiさん。製作者としても有名ですが、まとめ役としても実力者。イタリア国旗を描いた楽器を作っているところを見ると、愛国者なのかな、とも思います。楽器を少し触ったら「とっても良くなった。ありがとう」美しいお嬢様がビデオを撮っていました。
Daniele Tonarelliさんも毎年ブースを出している有力製作家です。昨年のSt.Rita教会でのコンサートでは、私が使う楽器として選ばせていただきました。今回も工房にもお邪魔しましたが、Del Gesuモデルの楽器がとてもよくてびっくり。
Robert Colliniさんはクレーマ(クレモナから車で1時間ほど)在住の有名な製作家です。工房にはお邪魔したことはないのですが、さすが、と思わせる楽器たちでした。
Daniele Scolariさんは製作学校の先生。お兄さんのGiorgioさんも名物先生で、最近まで副校長(実質的な校長)でした。先生らしく、しっかりした綺麗な楽器で、とても弾きやすいものでした。
クレモナ(周辺)ではありませんが、Vettori Familyのブースも恒例です。当主のCarloさんはすでに70歳を超えているはずですが、素晴らしい楽器を作っています。Carloさんのお父さん(Dario)は名製作家として名を知られた方ですが、現在はCarloさんと二人の息子さん、お嬢さんの一家で工房を持っています。いずれもとても良い楽器ですが少しずつ違いがあり、毎年楽しみにしています。
日本的には有名ではありませんが、一番仲良しのMassimo Ardoliさんも、今年はブースを出していました。実は、搬入の前日に工房にお邪魔して5台全部試奏済み(笑)
それ以外では、ポーランドから来た製作家の楽器がとても面白かったです。特に写真の女性が作ったヴィオラは素晴らしいもので、日本に持ってきたらすぐに売れるだろうなぁ・・・と思いました。
その他にもたくさんのブースにお邪魔しました。本当は全部ご紹介したいのですが、まだ30以上あるので全部は書ききれません。このあたりで。
そういえば「モラッシーさんがいないじゃないか」そうなんです。モラッシーさんとALIの展示会は市内で行われています。展示会の近くでシメオネさんとバッタリ会ったときに「来てね!」と言われました。はい、最初から予定してあります(^^)こちらのレポートは後ほど。
会場で見つけた面白かったものを3つほど。
一つ目はドイツの製作家さんが見せてくれた「秘儀」です。板の上に直線が引いてありますね。このどの部分が一番振動するかを実験して見せてくれるのです(もちろん、自分の楽器のアピール)。「普通はセンターラインが一番振動するように作ろうとするのですが、私は魂柱の当たるところを一番振動するようにしました。それによって楽器全体に振動が大きく滑らかに伝わって素晴らしい楽器になるのです」確かに、ラインに沿って音叉を当てると、魂柱のところが大きく響きます。確かに滑らかに振動する良い楽器ですが、その他の要素も大きいので、ずば抜けている、という感じはありませんでした。製作家のみなさんは、日夜さまざまな工夫をして努力しているのですね。
ふたつめは、長さを変えることができる魂柱です。2枚めの写真のように紐を使って回すことで長さを調整できるのです。上下の部分は角度が可変で、表板、裏板のどちらもぴったり接着できるように調整できます。これはこのまま魂柱としても使えますし、これで長さや角度を決めることもできるのです。
三つめは「Gewaキャンペーンガールズ」です。ドイツとイタリアの三色旗に塗装したチェロケースを背負って会場内を練り歩いていました。いい趣味かどうかは・・・みなさんのご判断に任せます(笑)
最後に、大幅に変更になった入場システムについて、少々愚痴を・・・
会場に着いたのは10時20分くらいですが、入り口には長蛇の列。チケットは製作者からもらっていたので、仕方ないので列に並ぶ。15分ほどしてようやく入り口にたどり着いたら「あっちに行け」とパソコンの前の列を指示されました。よく見ると、並んでいる人たちはなにやらプリントアウトしたチケットを「別に」持っているではありませんか。説明を聞いてみると(菊田さん、ありがとうございました!)
・チケットは単なるコード発行用のもの(もちろん、ここでお金がかかる。いただいたのでお金はかかっていません)
・モンドムジカのサイトにアクセスして、名前/住所などの個人情報とチケットの番号を打ち込む
・その後、チケットシートができるので、プリントアウトするかパソコン(スマホ)に送信してチケットになる
という段取りを踏む必要があったのです。チケットだけしか持っていない人やチケットすらない人のためには、会場で、手書きで必要な情報を書き込んでチケットブースで入場のためのチケットを発行してもらうか(これは昨年までと同じ)、会場においてあるパソコンで打ち込んでプリントアウトするか、いずれかの選択肢がありました。しかし入り口で指示されたのは「パソコンで入力しろ」だけ。しかも、パソコンが4台しかありません。イタリア人ですら入力にとても手間取っていて、とにかく時間がかかる。パソコンはイタリア仕様のキーボードで、画面にもイタリア語/英語のところだけでなく、イタリア語しか書いてない欄もあるのです。なにしろ@の出し方がわからない・・・係りの人に全部やってもらったのですが、とにかく頭が悪いシステムとしか思えませんでした。あちこちで愚痴をこぼしたので、主催者に届いていることを願います(というか、苦情殺到だったと思いますが)。