今日は松脂の話です。
モンドムジカでは昨年から見かけて気になっていたのですが、値段に臆して買っていなかった松脂がありました。楽器と弓以外のアクセサリーなどにはある意味で無頓着な私ですので、よほどのことがないと一生懸命試したりはしません。生徒のためには必死に探しますが(笑)弦でも、生徒やサラサーテの編集部、楽器屋に言われて試してみる、という受け身ですので、そちらについても積極的に試してみる派ではありません。
今年のクレモナでのことです。10月いっぱいでオーナーが交代したLocanda TorrianiでオーナーのPaolo と夜中にしんみりと(してませんが/笑)飲んでいた時のこと。夜中に戻ってきた3人組が、オーストラリアから来た松脂の製作者でした。少しばかり松脂談義をして、「東京にも行くから是非試してみて」と言われて弦楽器フェアで彼らのブースにお邪魔しました。のっけから「Hollow Maki」と名前で呼ばれてしまい、顔しか覚えていない私は赤面。そこで松脂の説明をしていただいて、「向かいの島村のブースで試してみて」と言われて島村の糸山さんに「お願いします」。楽器は今年は未だ弾いていなかったTadioliさんのもの、弓はフランスの新作という組み合わせです。最初は島村がいつも使っているベルナーデルをつけた状態で試奏。次に松脂をほとんど落として、3種類の松脂を試してみました。写真の左側はSupple というスタンダードタイプ、右側はCrispです。もうひとつは「Solo」。この順に同じ楽器、同じ弓で松脂を落とす、塗る、試奏する、を繰り返しました。
最初のスタンダードのものから衝撃的。雑音が半減(感覚としては8割方減った感じ)で、音がクリアになりました。しばらく弾いてみて「これはすごい」。さらにCrispを試すと、立ち上がりがはっきりして音量も増える。しかし雑音はSuppleの方が少ないですが、それでもベルナーデルとは比べ物になりません。そしてSoloを弾いて口をあんぐり。両方の良いところどりをしているような感じで、さらに音量のコントロールも楽です。同行していた生徒たちにはCrispを勧め、私は「Solo」ください。ところが品切れでした。その場になかった室内楽用は試せなかったのですが、コンセプトを聞いて想像がつきました。
Soloとアンサンブル用は実はSuppleとCrispのブレンドでした。Crisp75% Supple25%がSolo, 反対の割合のブレンドが室内楽用です。結局買ったのはSuppleとCrispの両方。「両方を加減してつけるといろいろと変化があるよ」とのことでしたので、あれこれと試してみようと思います。買いたかったSoloは後日送ってもらうことにしました。値段は高い(8000円弱)なのですが、消費量を考えると決して高い買い物ではありません。開発者は実はヴァイオリン奏者で、自分が弾く立場で形状なども工夫したそうです。
ベルナーデルの昔のものを知っていると、今の松脂は「どれでもいいや」という感じだったのですが、これは別物。生徒にももちろん勧めています。