本番の最中にいろいろなトラブルに巻き込まれることは、よくあります。特に、弦が切れた話はよく聞きます。みどりちゃんは、コンチェルトで2度も立て続けに切ったことがあるそうです。平然とリーダーの楽器を取り上げて引き続けたとか。やっぱりすごいですね。
◎ リサイタルで・・・プロの演奏家のケース
先日、私が最近レッスンをしていただいた先生の演奏会に行きました。とっても「力演タイプ」の先生で、迫力十分。休憩後の最初の演目は、ラヴェルのヴァイオリンソナタでした。その2楽章のこと、激しいピツィカートの後、E線を激しく奏するところで、「ばちーん」という音が・・・E線が切れてしまったのです。客席には「はっ」という雰囲気が充満します。こういう時って、聞いている方も困っちゃうんですよね(^ ^;;すぐさま、先生は肉声で客席に声をかけました。「すみません。E線が切れてしまいました。こういう重音ばかりの曲だと、このままやるわけにもいきませんので、申し訳ありませんが弦をとりかえてまいります(_ _)」先生は下手袖に引き返し、弦を張り替えて再び登場です。「申し訳ありませんでした。それでは、ジャジィなところからやらせていただきます」とおっしゃって、2楽章の最初から演奏を始めました。別に動揺したところもなく、今度は最後まで、無事演奏が終了しました。
でも、僕は見逃さないのだ。やり直したとき、一回目よりややゆっくりでした(^ ^)きっと、張り替えている最中に打ち合わせをしたんだと思います(^ ^)
◎ アマチュアのオケのケース
長いことアマチュアをやっていると、自分でも、メンバーでも、何回か経験があります。アマチュアのオケの場合、ヴァイオリンやヴィオラの奏者が弦をきってしまったら、楽器を後ろの人と交換して、バケツリレーのように後ろに送り、最後の人が袖の予備の楽器を交換することが多いようです。でもこの「バケツリレー」結構時間がかかる上に、わりとみっともない。ステージが狭くて身動きがとれない場合なら仕方がないですが、そうじゃなかったらとっとと引っ込んで直したほうがスマートのような気がします。というわけで、私が切っちゃったときは、トップを弾いている時を除いて、できるだけ自分でさがるようにしていました。トップを弾いているときはそういうわけにはいきませんので、裏の人と交換します。
一度、ソロのある曲のリーダーをやっていて、ソロより前で弦を切っちゃったことがあります。この時は困りました。裏の人の楽器と交換して、私の楽器はどんどん送られていきます。そして弦を張り替えてまた戻ってきました・・・ソロが終わった直後に(^ ^;;
チェロは、楽器が大きいからもっと大変です。まさか「バケツリレー」をするわけにはいきませんからね。弦が切れると、ヴァイオリンとは比べものにならないくらい大きな音もします。
ある市民オケでのこと。チェロの女の子が弦を切りました。ステージが狭くて、下がって直すわけにもいきません。こういう時、普通はなんとかある弦だけで弾くか「弾いてるふり」をします。会場のお客さんは、弦をきったことにほとんど気がつきません。でも、その子は、目にいっぱい涙をためて、呆然と最後まで固まっていました・・・笑うに笑えないエピソードです。
◎ ドボルザークはいやよ
ある時、仕事でカルテットを引き受けました。曲はドボルザークの「アメリカ」。テンポよく快調に始まったのですが、1楽章の途中でG線を引いているときに、E線が切れてしまいました(これは、とっても珍しい)。他のメンバーは真っ青です。しかし、音楽は止まりません。始まってから、すでに4~5分は経っているでしょうか。その時の頭の中は、「いったんやめて弦を張り直して始めからやろうか。でも、もうだいぶすぎちゃったよなぁ。この後行事があるから、時間がずれると主催者が困るかもしれないし・・・だけどこのままいけるか・・・いつか、ハイドンで弦切ったまま弾いて大恥かいたもんなぁ・・・だけど調子いいし・・・ええい、いっちゃえ」という葛藤がありました。
譜面をご存じの方ならおわかりかと思いますが、ドボルザークのファーストは、とにかく音が高い。ただ、高いポジションの重音があまりないのが救いです。何時止めるか、はらはらしている他のメンバーたちに、「このままいくぞ」と目配せ。なんとか1楽章の最後まで、止まらずに行きました。そこでおもむろに袖に下がって弦を取り替え、何もなかったかのように2楽章へ・・・
え、最後のところ弾けたかって?それは聞かないでください(_ _;;(楽譜を知らない人ごめんなさい)