今日から二泊三日で、アズール有志、名古屋の生徒さんたちと、山中湖のペンションセロでアンサンブルの合宿です。アンサンブル合宿は、昨年試験的に行ってみてとても好評だったのですが、今年は実は時間的な問題で諦めていました。しかし、アズールの有志がどうしてもやりたい、ということで、名古屋の生徒さんたちを加え、なんとか調整をして、合宿ができることになりました。
レイトスターターのみなさんは、アンサンブル、特にカルテットなどの人数の少ないアンサンブルがとてもハードルが高いものだと思っているものです。「オーケストラなら参加できるようになるかもしれないけど、カルテットなんてとんでもない」と思い込んでいるレイトスターターがとても多いような気がします。
これは、教える側に大きな問題があるでしょう。レイトスターターが集まるサイトの掲示板を見ていると、「レイトスターターは、音感、運動能力ともにヴァイオリンを弾くには厳しいものがあるので、ある程度以上を望んでも仕方がない。だから、大勢の中に混ざれるオーケストラならともかく、一人でパートに責任をもたなければならないカルテットなんてとんでもない」ということを堂々と書く指導者がたくさんいます。こうした指導者は、教えることをまじめに考えていないとしか思えません。と、同時に、あまりにもオーケストラを馬鹿にした発言ではないかとも思います。
アマチュアのオーケストラは、参加者がベテランになればなるほど、また、大学のオーケストラ出身者が中心であればあるほど、いわゆる「大曲」を演奏しようとする志向が強くなるのが普通です。「ベートーヴェンはもう飽きた」「マーラーが弾きたい」「リヒャルト・シュトラウスをやりたい」なんていうことを口にするベテラン・アマチュアは少なくありません。
さて、こうした「大曲」ですが、実は、技術的に恐ろしく難しいのです。リヒャルト・シュトラウスなど、下手なコンチェルトより遥かに弾きにくいといってもいいでしょう。そういった曲をやっているにもかかわらず、「オーケストラの方が参加しやすい」とはどのような意味であるのか、考えてほしいと思います。
私は、オーケストラで弾けないところをごまかしながら参加しているより、弾ける曲をきちんとアンサンブルすることの方が喜びは大きいのではないか、という考え方をしています。もちろん、オーケストラの方がずっと好きだ、という人もいるでしょうが、ヴァイオリンを弾いてアンサンブルする、ということに限って言えば、できるだけ技術的に届くものを、音楽的なことも意識しながら演奏できるようにしてほしい、と思っています。その方が面白いと思えるはずだと確信しています。ですから、楽器を初めて1年ちょいの方も、かならず(アレンジものではない)カルテットに参加してもらうようにしています。
また、私は「自分が一番下手なアンサンブルほど面白い」とずっと思ってきました。ですから、こうしたアンサンブルを皆さんに体験していただく場では、できるだけ「贅沢」な経験をしてもらえるように心がけています。今回も、トレーナー役が私を含めて7名、生徒側の参加が13名という、参加者に取ってはとても恵まれた条件を用意することができました。トレーナーは全員、三日間休みなく働いていただいて(苦笑)、そのおかげで、参加者の皆さんは良い経験ができるのではないか、と思っています。