柏木真樹 音楽スタジオ

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 高校の同期会で、日本のAIの第一人者である松原仁函館未来大学教授と少しお話をすることができました。普段から活躍ぶりをFacebookや報道などで見ていたのですが、私もとても興味がある分野で、話ができることをとても楽しみにしていました。宴席でのことですから、もちろん真面目な議論(議論なんかできるわけないですね/笑)ではありませんが、少しばかり興味深いことがありました。

 AIが日本(だけでなく海外でも)で大注目されるようになったきっかけは、昨年、グーグルが開発している人工知能が韓国のトップ棋士にハンデなしで勝利したことでした。将棋はすでにコンピューターが人間より強い時代を迎えてしまったのですが、可能性がはるかに多い囲碁(碁盤は19×19ある)では、コンピューターが人間に勝つのにはまだ20年かかるだろう、と言われていました。それを克服したのがAIです。

 コンピューターが強い、というと、「人間よりたくさんの計算が素早くできるから」と思いがちですが、AIは現在のコンピューターのイメージとは少し違う働きをします。従来のコンピューターは、あくまで人間が書いた道筋に従って計算処理を繰り返すのですが、AIは学習したことを蓄積して「自分で判断して」結果を導き出すことができるのです。ですから、学習の仕方によっては、非常に危険な存在になる可能性もあります。実際に、コンピューターに人間が支配される近未来小説などもありますが、こうしたことが起こる可能性はゼロではありません。とはいえ、人間が思いもつかなかった結論を引き出すことができるのは、AIの大きな利点です。「何を思いつかなかったか」を人間側が見失ってはいけない、ということは忘れてはならないことですが。

 私がAIに興味を持っているのは、現状のロボットでは絶対に不可能だと思える右手が、AIを使ってできるようになるのではないか、と考えたからです。この点については、昨年3月のエントリーで詳しく述べました。

https://maki-music.net/blog/20160317aiviolin/

 右手の問題については、話を教授にふったところ「とても面白いテーマだけど、囲碁よりもずっとファクターが多いから、アプローチを考えるだけでまだまだかなりかかりそう」とのことです。確かに、囲碁はパターンが多いと言っても所詮は閉鎖空間での問題で、ヴァイオリンの右手とはかなり違うと思います。しかし、意外に近い未来のことかもしれません。

 今日のエントリーで書きたいことは、実はこのことではありません。それは、「AIとは何か」という本質的な問題です。

 アルファ碁がセドル9段に勝利したことでAIが大きく注目されたのですが、注目のされ方が「コンピューターと人間のどちらが強いか」という点にばかり集まっているような違和感がありました。ヴァイオリンを正確に弾くロボットが登場した時に、私たちは「ロボットの方が正確な演奏だ」ということだけに注目してしまうのでしょうか。

 この違和感について話を持ちかけたら、教授は「そう、そうなんだよね。所詮はAIはツールだということが理解されていない傾向がある」と何度も言っていました。「人間が進歩するための道具としてAIが使えるようにならないといけない」ということです。人間が思いもつかなかった解法をコンピューターが示した時、それを利用して人間が進歩する、そうでなくてはコンピューターを利用することが本末転倒になってしまうのです。最先端の科学者は、やはりそういうことをしっかりと捉えて研究をしているのだな、と、ある意味で納得しました。

 教授がヴァイオリンの右手に挑戦することがあれば、一緒に考えてみたいと思っています。

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[ 2017/03/27(月) 20:55 ] ヴァイオリン, 体や頭のこと, 日記, 楽器, 音楽的主張| コメント(0)
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