8月28日に、スタジオで第32回音楽理論講座「音が音楽になるとき・・・第1回 総論」を行いました。参加者は19名。14時から19時の長丁場でしたが、まだ話し足りない・・・相変わらず、時間の使い方がうまくありません。ピアニストの筒井一貴さんに手伝っていただき、当初の内容を少し変更して行いました。
今回の講座は、下記の3回の講座を含めた4回シリーズの一環です。
第33回音楽理論講座「音が音楽になるとき2・・・「リズム」を知ろう」
第34回音楽理論講座「音が音楽になるとき3・・・フレーズを理解する」
第35回音楽理論講座「音が音楽になるとき4・・・強弱やテンポの変化」
小さな頃から楽器に親しんでいる人の中には、苦労せずに「音楽的な演奏」ができる人がいます。これは、たくさんの演奏を聴き、あれこれと弾いている間に、「音楽的な演奏の原則」を自然に身につけるからです。音楽的な演奏ができるかどうかを「センス」と表現する人は多いのですが、この「センス」は、あくまで経験によって育まれるもので、先天的なものではありません。もちろん、小さな頃から楽器をやっていても、音楽的に演奏できない人はたくさんいます。そういうところが「生まれつきのセンス」と誤解される理由かもしれません。
「いまいち音楽的じゃないな・・・」と感じる演奏には何が足りないのか、
それを実際にピアノとヴァイオリンを演奏しながら解説しました。総論的な解説で目指したものは「変化」「ゆらぎ」です。
旋律や伴奏形を用いて、全く変化がない演奏、ある部分だけを変化させた演奏、音楽的な演奏、などを聞き比べてもらい、単なる音の羅列が音楽になっていく様子を実感していただけたと思います。
講習会で「練習するときに、最初は正確に弾いて、それから音楽的になるように練習するのですか?」という質問が出ました。レッスンでは日頃から注意しているのですが、こうした考え方は正しくありません。音程やリズムを「正確」に(場合によってはメトロノームを使って)練習して、それから音楽的に聞こえるように変化をつける、という方法では、さまざまな問題が生じるのです。例えば(次回のテーマであるリズムの問題ですが)、メトロノームをかけながら最初に練習をすると、拍子を自分でイメージすることを脳がやめてしまうことがあります。リズムの本質は「拍子、拍を脳が作り出し、記憶されたリズムをその上に乗せる」ことですが、肝心の「拍」を脳が
作らなくなってしまうのです。このあたりのことは、サラサーテ誌にも何度か書かせていただきました(興味がある方は、サラサーテ47号から52号をご覧ください)。
音楽的な演奏をするためには、最初から楽譜を見て音楽的なイメージを作ることが大切です。それをするかしないかで、音楽的な演奏に近づけられるかどうかが決まる、と言っても過言ではありません。
次回以降の講座も、充実したものにしたいと思っています。
講習会の後は、好例の「反省会」。今回は、スタジオの向かいにあるイタリアンプルチーノで、ワインを飲みながら。2時間ほど、あれこれと楽しい話題に花が咲きました。