2013年になりました。時が経つのは速いもので、ミレニアムからすでに干支が一回りしてしまいました。昨年も、多くの方々に助けられて、無事に1年間、仕事を続けることができました。私を支えてくださったすべての方に、この場をお借りしてお礼を申し上げます。今年も、昨年より一層よい仕事ができるようにがんばりたいと思っています。変わらぬご厚情のほど、よろしくお願いいたします。
思えば、リーマンショック、東日本大震災と、音楽業界にとっては「超逆風」が続きました。音楽之友社の経営難、レッスンの友社の廃業など、その影響が具体的な結果となってしまったことは、大変残念なことです。日本人の選択が、弱肉強食・文化軽視・思考停止に流れている中で、これからも音楽の世界の厳しさは続くと思いますが、音楽の力を信じて、できる限りの努力をしていこうと思っています。
自分自身を改めて見直すためにも、そして来年からの方向性を明らかにするためにも、昨年の1年間を簡単に振り返って、今年の課題・目標を考えてみたいと思います。
● 体の本について
最初に原稿を書いてから5年も経ってしまいましたが、比較的読みやすいものに仕上がったと思っています。この手のものは、下手をすると「ハウツーもの」に堕してしまうか、難解で取っ付きにくいものになってしまいがちです。その「ワナ」には、どうやらハマらずにすんだのではないか、と思っています。
とは言え、課題がたくさん積み残されてしまったことも事実です。
まず、ヴァイオリンの「奏法」について全く触れられなかったこと。
体の使い方は、基本的な運動に「何を加えるか」によって、さまざまな運動を作ることができます。音量、音色、スピードなど、加えねばならないものは多く、できるだけ早い段階で、これらをまとめたものを書きたいと思っています。
問題はひとつは「奏法の定義」にあります。
今回の本でも一言だけ触れたのですが、奏法をどのように定義するか、ということは大変に難しいのです。これまで書かれてきた様々な指導書でも、奏法の定義が全く異なることは少なくありません。ヴァイオリンを指導する現場でも、指導者によって全く違うことを教えている例はたくさんあります。こうした現状を踏まえて、できるだけたくさんの人にとって意味のある「奏法書」にするにはどのようにしたらよいのか、ということが大きな問題です。
もうひとつは、「解に到達するルートをどのように示すか」です。
実は、「足し算」すべき体の使い方については、ほぼわかっていると言ってもいいかもしれません。「これこれ、このような音を出すためにふさわしい体の使い方」と限定してしまえば、解を見いだすのはそれほど大変なことではないのです。しかし、それを「あらゆる人がマスターできる方法論として」提示することには、とても大きなハードルがあります。実際にレッスンをしていて、このことの難しさは身にしみています。それを本にするとなると・・・
今年からの、最大のテーマのひとつになると思います。
● オーケストラCONSONOについて
昨年は、新しいオーケストラの音楽監督をさせていただき、2回のコンサートを無事に終えることができました。ご来場くださった皆様、団員のみなさんに深く感謝いたします。
私にとっては、オーケストラは音楽的な「夢」を実現するひとつの大切な場です。20年ほど前に「自分のオーケストラを作るぞ!」と騒いでいたときには、自分は奏者として参加するつもりでした。しかし、それからの経験と人のつながりによって、こんな形でオーケストラ活動を実現させることができたのは、思いがけない幸せでした。
とはいえ、新米指揮者としては、学ぶべきことは山積みです。そして、音楽監督としては、聴きにきてくださるひとりでも多くの方に、「CONSONOのコンサートに来てよかった」と思っていただけるように、できるだけの努力をしたいと思っています。
今年も素晴らしいソリストの皆さんと共演することができ、さらに、来年からは、客演の指揮者にも来ていただく予定です。今年がCONSONOにとって大きな進化の年になるように、ともに歩んでいきたいと思っています。
● ストリングス・アズールについて
昨年はコンサートがなかったアズールですが、今年は2年ぶりのコンサートがあります。アズールの力量には過ぎた曲目ですが、どうなるでしょうか。
アズールは、私にとってある意味での「原点」です。ニフティのパソコンフォーラム時代の「ドレ会」がなかったら、私が音楽の世界に舞い戻ってくることはなかったかもしれません。そうした意味で、常に「自分にできることは何か」を考えさせてくれる場でもあります。
昨年は、後半になって新入団員も数人あり、少しずつ「当たり前のこと」ができるようになってきました。アズールのコンセプトのひとつは、「ひとりひとりも、ともに成長するオーケストラ」です。もちろん、みなさんは少しずつ前進していますが、もっともっと前を向いて練習ができるようになってほしい、そして、そうなるように私ももっと引き出しを増やして、ともに成長したいと思います。
● レッスンについて
日々のレッスンは、相変わらず、反省させられることが多いものです。最近も、「しまった」と思うことがありました。まだまだ修行が足りないですね・・・
それにしても、生徒さんたちの進化、努力には頭が下がります。きちんとした練習やトレーニングを続けている生徒さんたちは、例外なく、昨年1年で確実に進歩しています。
カルテットのレッスン、理論講座なども、もっともっと充実させていきたいと思います。
● その他の活動について
音楽的な活動も、少しずつ軌道に乗せていきたいと思っています。最初は、2回で頓挫していたレクチャーコンサートの復活!!「ネタ」はたくさんあるのですが、自分の演奏活動は、どうしても後回しになってしまうのです・・・年齢的にも、そろそろそうした活動を再開しないと間に合わなくなってしまうでしょう。
サラサーテの連載や、これまでの理論講座などを書籍化することにも、今年は具体的に力を注いでいきたいと思っています。
みなさんの支えがあって、今の私があります。今年も、そのことに感謝を忘れず、少しでもよい仕事ができるようにがんばっていきたいと思っています。
今年1年が皆さんにとって、実り多い年になりますように。繰り返しになりますが、今年もよろしくお願いいたします。