柏木真樹 音楽スタジオ

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ロオケは普通、年間100回以上の演奏会をします。ですが、アマチュアオケの活動の中心は練習にあります。(いや、練習後にあるのだ、という人もいるかもしれませんね(^ ^))ですから、練習中にもいろいろなハプニングが起こります。そんな話を集めてみました。

[目次]

1.練習中のイタズラ

2.ぼく、うまいんです君

 

1.練習中のイタズラ

1)指揮者には絶対音感があるか

練習中に、いろいろなイタズラをするのは、アマチュアオケの特権でしょうか。とにかく、いろんなことがありました。特に、学生時代は、指揮者の先生ともなんとなく馴れ馴れしくて(本当はいけないんですよ)、しょっちゅうイタズラをしていました。

違う音を出す・・・というイタズラはよくやりました。指揮者(またはトレーナー)の先生がいつ気がつくか、という、実に失礼きわまりないイタズラです。どうするかというと、始まった瞬間、全員が例えば半音高く始めるわけです。奏者の方にもかなりの負担がかかりますので、早く気がついてくれないと、オケは崩壊します(^ ^;;これが、曲によっては、以外と分からなかったりする。もちろん、絶対音感のある指揮者や、よい耳を持っている指揮者には通 用しません。でも、時にはオケが完全に崩壊するまで進んでしまうこともありました。

ある日、ある指揮者にこのイタズラを仕掛けることになりました。出だしはトランペットです。先生は指揮棒の予備動作に入った瞬間、振り下ろさずに、指揮棒をおろしました。「何をやろうとしているんですか?」先生は笑顔でお聞きになりました。団員はみんなずっこけ。なんでばれたかって?ブレスが不自然だったんですって(^ ^;;それ以来、その先生には、その手のイタズラはしなくなりました。

2)曲はどこへ行く

私のいた大学オケの定番のイタズラは、「曲のとっかえっこ」でした。何かというと、ある曲が進んでいるときに、同じ和音、リズムなどをもつ他の曲にスイッチしてしまうのです。今から考えると、結構準備も大変なのによくやっていたなぁ、と感心しますが(^ ^;;練習している曲に相応しいところがあると、全員の譜面を配って(時にはわざわざ作って(^ ^;;)練習にのぞみます。指揮者(またはトレーナー)は、もちろんそんなことは知りません。ですから、みんな緊張して、そこへ行くと「やったー」ってな感じで、違う曲に突入するのです。だいたい、数小節から1フレーズくらい、呆気にとられている先生を無視して演奏して、みんなで大笑いして終わります。むりやり続けられるところは、以外とたくさんありますよ。特に、モーツァルトなんか大変。ちょきちょきしてはりつけると、あっちからこっちへ、こっちからあっちへと飛ぶことができます(^ ^;;

さて、ある時、ドボルザークの8番を練習していました。2楽章の101小節から、ブラームスの1番の4楽章の冒頭へと飛ぶお約束です。さて、101小節目にはいりました。すると指揮者の先生、にやっと笑って、「よし、最後までついてこいよ」と一言。「え、」と驚く団員を後目に、颯爽とブラームスを振り始めました。全然練習していなかった訳ですから、団員は必死です(^ ^;;結局、オケが崩壊して「オケの負け」に終わりました。ないはずのコントラバスがC音を弾いてしまったのを、先生は聞き逃さなかったようです(^ ^)

3)イタズラされて男(女)を上げる

これも大学オケでのイタズラです。別名「ソロひかせてやる(^ ^;;」。

やり方は簡単。弦楽器(ファーストが一番いいですね)の難しいところ、特に飛びつきのところで、ある一人以外の全員が突然弾きやめるだけです。例えば、ドボルザークのスラブ舞曲のCDurなんか最高(^0^)。くり返して戻ったところで、犠牲者を除く全員が弾きやめる訳です。すると、あわれな犠牲者は、突然一人で弾かされることになります。音を外したりかすんだりしようものなら、みんな大喜び(^0^)。しかし、すばらしい音できれいに弾いたら、男(女)を上げることになるのは言うまでもありません。

2.ぼく、うまいんです君

これは、エピソードという訳ではないのですが・・・

本番近くのアマチュアのオケに練習に行くと、たいてい「本番要員」のエキストラがいます。多くはベテランアマチュアプレーヤーですが、オケによってはプロや音大生が混ざっていることもあります。

さて、このエキストラ君たち、ほとんどの場合、多くの団員より「上手」に弾けるものです。当たり前ですよね、トラにくるんですから。この人たちの中に、ある傾向があります。ここで話題にするのは、席に座ると調弦もそこそこに「コンチェルト(もちろん、バッハの無伴奏なんかでもいい)」を弾き出す人。こういう人は、周りがオケの曲を練習しているのを尻目に、せっせとコンチェルトを弾いています。いや、その目立つことと言ったら・・・

こういう人を、家では「ぼく、上手いんです君」と呼んでいます。大抵は「トラ慣れ」した達者な方ですが、ほとんど「そこそこ」なんですね(^ ^;;本当にぶっ飛ぶほど上手な人がこんなことをしているのに出会ったことがない。

話は、20数年前に飛びます。

大学オケのお座敷で、ある合唱団のオーケストラを担当したときのことです。僕はまだ一年生だったので、後ろの方で弾いていました。周りには見たことがない人たちがいます。その人たち、練習不足なのかちゃんと弾けてないんですよね。特に僕の隣に座った人は、「落ちる」だけじゃなくて本当に「弾けてない」。合唱団の地元のアマチュアオケの人かなぁ、と思っていました。それが・・・

休憩時間になると、そのうち何人かが颯爽とコンチェルトを弾き始めました。そんなに上手な訳ではないのですが、少なくとも大学オケの多くの人よりは上手そう。こんなに弾けるのになんでちゃんと弾かないんだ?と少々頭に来ました。そのことをトップの先輩に言うと、「あいつらちゃんと弾いてないの?」。どうやら、東京の某有名音大の学生さんたちらしいのです。(ちなみに、芸大、桐朋ではありません。)休憩が終わって練習が始まると、相変わらず弾けていません。

練習後、とうとう言ってしまいました。「あの・・・ちゃんと弾いていただけませんか?」その学生君たち、恐縮するより「何言ってんだ、こいつ?」という顔で見ています。僕も気が強い方ですから、さらに、「コンチェルトをさらう暇があったら、弾けないところをさらったらいかがですか?」と追撃。さすがにすごすごと退散しました。

さて、この話には後日談があります。

あるプロのオケ奏者の結婚式にご招待されたときのこと。くだんの「ぼく上手いんです君」に会いました。こちらは覚えていなかったんですが、向こうは僕を見るなり苦い顔。話を聞くと、どうやらプロオケで弾いているようなんです!正直、びっくりしました。周りの同僚が話を聞くと、「こいつ、昔からそうだったんだ。今や歩く×××(オケの名前)の恥、って呼ばれてるからなぁ」とからかわれています。そうだったんだ・・・と少し安心???

最近、某アマチュアオケのトレーナーをされているようです。どんな風に変わったのか、お会いしてみたいと思っています(向こうは迷惑でしょうが・・・)。

 

私が体験したことや聞いた面白い話など、演奏会本番での出来事をあげてみました。

 

[目次]

(1)飛び出しの話

(2)シンバルは楽譜を吹き飛ばす

(3)演奏旅行はエピソードの宝庫

(4)寝過ごし防止は漫画はだめよ

(5)消える指揮者の謎

(6)ダンディな指揮者

(7)同じと思うな気をつけろ

(8)持ち替えエキストラ

(9)指揮者とオケの壮絶なる戦い(^ ^;;

(10)ピットの中は無法地帯?

(11)シャンデリアががっしゃーん

(12)禁断のガイド

 

(1)飛び出しの話

まずは、自分の恥ずかしい体験から。

オケの本番で、「飛び出し」たり「居残ったり」してしまって、楽譜に書いてない「ソロ」を弾いてしまうことがよくあります。(よくはないって(^ ^;;)大体が不注意だったりするんですが、真剣に弾いているのに、そう思いこんでしまうと、はまります。

大学1年の時、ジュネスオーケストラに参加したときのことです。曲はベートーヴェンの7番の交響曲。初めての参加で、結構「興奮して」いました。曲もけっこうエキサイティングですし・・・指揮者は井上道義さん。けっこうのせるのが上手な方で、みんな頑張って演奏しました。

3楽章のこと。ご存じのように、3楽章は激しい部分と伸びやかな部分が交互に出てきます。激しい部分から伸びやかな部分に変化するところ(小節数で言うと140小節くらいのところ)で、「チェロ・バス、ビオラ、セカンド、ファースト」と順にフォルテシモで三連符が出てくるところがあります。チェロの始まりから数えると、ちょうど8小節の単位になっていますが、順に出てくる関係で、ファーストは5小節、同じことを繰り返します。ここで、「はまって」しまいました。

同じことを繰り返す時って、無意識に「二つ単位」を数えません?これをやっちゃったんです。本番中、盛り上がるところで、興奮もしていたんだと思います。「六つ目」を弾いちゃいました(^ ^;;不運なことに、楽器を新調したばかり。大きな音のする楽器です。全員が「のばし」ているとき、どソロを弾いてしまいました。しかも、NHKが収録していて、その後全国放送されました(^ ^;;しっかり聞こえています(; ;)

後から、諸先輩方に「おまえそんなにソロ弾きたいんか」とさんざんからかわれましたが、その瞬間は頭が真っ白になって、そのあと何を弾いたのか、全く覚えていません。極めつけの飛び出しでした(; ;)

(2)シンバルは楽譜を吹き飛ばす

これは、あるN響のOBに伺ったお話です。

いわゆる「音教オケ」でのこと。打楽器に新人の女性が加わりました。オープニングの曲は、「カルメン」序曲。くだんの新人は、シンバルの担当です。演奏が始まりました。シンバルの大活躍する曲です。
「ちゃんちゃかちゃかちゃかちゃんちゃかちゃかちゃかちゃんちゃかちゃかちゃかちゃーん」

ご存じのように、シンバルは最初のフレーズの最後の「ちゃーん」のところに2発入ります。思い切りよく、「ちゃーん、ちゃーん」と叩きました。するとその風圧で、彼女の楽譜は吹き飛ばされ、前の方へ飛んでいってしまいました。さぁ大変。新人さんは頭が真っ白になって、「とにかく叩かなきゃ」・・・そして・・・

彼女は、一拍ずつ最後まで、全部の拍にシンバルを入れてしまっんだそうです(^ ^;;さぞにぎやかなカルメンになったことでしょうね(^ ^;;

(3)演奏旅行はエピソードの宝庫

学生オケやアマチュアオケの演奏旅行は、楽しいものです。旅行先の思いでだけでなく、仲間たちとの旅行は、いろんな思い出が残るもの。しかし、脱線話も結構多いです。

電車の寝過ごし、なんていのは、どこのオケにもころがっている話でしょうね。私も(自分がやっちゃったわけではありませんが)二度ほど遭遇しました。一度は特急電車だったので大変(^ ^;;会場にたどり着くまで3時間以上遅れてしまいました。

旅行中は、若さ故に羽目を外すことも多いですね。毎晩酒盛り。地方へ行くと、美味しい物がたくさんあったりして、どうしても酒も進みます。当然、寝不足(^ ^;;演奏のコンディションを考えるとよくないことですが、「ついうっかり」も多いですね。

ある時、本番のステージにサンダルで上がった人もいました(^ ^;;今から考えると、セカンドヴァイオリンでよかったと思います。ファーストだったら客席から丸見え(^ ^;;休憩時間に袖に戻ってきて指摘されるまで、本人は全く気がつきませんでした。

(4)寝過ごし防止は漫画はだめよ

オケの後ろの方に座っている人たち、特に打楽器やトロンボーン・チューバなどのプレーヤーは、とっても暇なことがあります。ある楽章まるまる休み、なんていうことも珍しくありません。そして、演奏会の直前は、いろいろな準備で忙しかったりすることも多く、役員なんかをやっていると寝不足におちいることも少なくありません。(気のせいかなぁ、打楽器の人って、役員をやる確率が高くありません?)

そんな時、ステージに上がってから10分も15分も休みだと、つい「うとうと」してしまうことがあります。これがとなりにプレーヤーが座っている楽器なら、まだ「落ちる」ことは少ないでしょう。大抵、隣の人が気がつきますから、大事に至る前に起こせばすむことだからです。

これが、打楽器奏者だと大変です。多くの場合、他のプレーヤは隣近所に座っていませんから、自力で目を覚ます必要があります。有名なのは「新世界」交響曲のシンバルですね。全曲を通 して、たった一発しか出番がありません。これをたたき損なった人の話は、あちこちで耳にしました。

「田園」交響曲のティンパニも要注意です。1楽章から3楽章まではお休み。しかも、3楽章までは、あまりにぎやかなところがない。4楽章までいってにぎやかなところになって気がついたのでは、もう手遅れです。直前までずっとピアノ、というのが意地悪くできてる(^ ^;;

ある時、直前のリハで、ティンパニ奏者が寝ていて出られませんでした。本番でなくてよかったのですが、まわりの仲間たちは本番が心配です。そこで一計を案じて、ティンパニの横の客席から見えないところに余分のいすを置き、そこにちょっとえっちな漫画を置きました。ティンパニ君は、ステージに乗ってからそれに気がつくと、夢中で読み始めました。これで寝過ごさなくてやれやれ・・・だったはずなんですが・・・

結局、漫画に夢中で、出損なってしまったんです。

(5)消える指揮者の謎

これはあまりにも有名な話なので、ご存じの方も多いと思います。

とあるオケが「チャイコフスキーの第5シンフォニー」を演奏していたときのことです。4楽章のマーチ風のところで、突然、楽員の視界から指揮者が消えました。「えっ」と楽員は大慌て。

実は、指揮者は指揮台から客席に落ちてしまったんです。この大指揮者は指揮台の上で縦横に動き回ることで有名で、勢い余って後ろに落ちてしまったのでした。そして怯むことなく、下から指揮をしながら再登場した、とか。

この話、N響の演奏旅行の時のことだそうですが、同じ話を日フィルのOBからも聞きました。ただし、「悲愴」シンフォニーの3楽章ということでしたが・・・どうも何回も同じようなことがあったのか、それとも記憶が間違っているのか・・・真実を検証していないのでわかりません。

その大指揮者の名は・・・故山田一雄氏です。

(6)ダンディな指揮者

山田一雄氏といえば、その指揮のダイナミックさとダンディズムが有名でした。あまりにめまぐるしく指揮台の上で動くので、口の悪いプロオケのプレーヤーの中には、「じゃまだかずお」なんて呼んでた人もいるそうです。

山田氏のエピソードは、恐らくどこかにまとまった物があると思いますから、そんなものを見つけられると面 白いでしょう。まるで「動くエピソード製造器」だったそうで、面白い話にはことかきません。

演奏旅行に行ったときに、汽車に乗り遅れて走って追いかけた話(走って追いかけちゃうところが山田氏の山田氏たる所以だそうです(^ ^;;)なんかは、「ホントかい」と、耳を疑いました。

私が見ていて一番面白かったのは、「ハンカチ飛ばし」ですね。山田氏は、必ず胸ポケットにハンカチを忍ばせて指揮をします。そして、指揮の最中、頻繁に汗を拭います。そして、演奏が最後の方になって、「これが最後の汗拭きだ」という場所が終わると、ハンカチを格好良く投げ捨てるのです。その格好の良さに惚れた人も多いとか。

ある日、マーラーの9番のシンフォニーを聴きに行きました。教え子を一緒に連れて行ったんですが、その子は曲を知りません。そこで、「指揮者を見ていてごらん。ハンカチを捨てたらもうすぐ終わりだからね。」と言っておきました。彼女は一生懸命指揮者を「見て」いました。そして、大先生がハンカチを捨てると同時に、「あ、もうすぐ終わりだ」と声を上げてしまいました(_ _;;周りから白い目で見られたのは、言うまでもありません。

(7)同じと思うな気をつけろ

これもベートーヴェンの7番の3楽章の話です。

以前にも書きましたが、この楽章は、快活な部分と中間部が「ABABAB’A’」と繰り返し出てきます。これがよく似ているんですね。音はほとんど同じです。でも、ディナーミクがちょっと違う。楽譜をめくっても、また同じようなところが出てきます。

ある人が、「あ、これ譜面めくらなくてすむじゃない」といって、譜めくりをさぼることにしました。版によって、一カ所、どうしても弾きやめないとめくれないところがある。上手に戻ると、音は全くおなじです。「いいアイデアだね」。弾きやめないでも、めくれそうです。それにステリハで気がついて、本番で実行しました。しかし・・・

一回目にフォルテだったところが、二度目はピアノです。それに気づかず、思いっきりフォルテで弾いてしまいました(^ ^;;

うまい話には裏がある、という実例でした。

(8)持ち替えエキストラ

以前、ある地方のアマチュアオケに、エキストラとして出演したときのことです。

平日の音楽教室、ということで、正規の団員ででられない人が多く、半分以上がエキストラ、という状態でした。私はもちろん、ヴァイオリンで呼ばれていたのですが、朝練習に到着すると、「あの・・トップサイドで弾いていただけません?」「へ?」という感じで、団員の少なさを理解してください(^ ^;;

さて、練習が始まりました。予定の時間を10分過ぎているのに、数人の空席があります。弦はともかく、管楽器は大事。本番直前のこれだけがトラにとっては練習ですので、指揮者はいらいらしています。そのうちに、理由が判明しました。この都市に来るための電車が止まってしまったんです。それじゃあ、仕方がない、ということで、なるべく穴の開いていない曲から始めました。30分もすると、遅れた電車とタクシーを乗り継いで、ほとんどの席が埋まりました。ただ・・・打楽器が足りません。

カルメンの序曲を始めたのですが、シンバルを叩く人がいないのです。指揮者とマネージャーがごそごそと話し合っていましたが、そのうちこういいました。「どなたか、弦の方で、打楽器経験者はいらっしゃいませんか」だれも手を挙げません。すると、私と一緒に来ていたトラがいいました、「××さんができるんじゃないんですか(私のことです)」。私は昔、打楽器を少々かじっていたので、それを知っていた彼が声をかけたのでした。ということで、急遽、バイオリンの一番後ろに座席が変更され、人数の足りないものだけ、打楽器をやることになりました。なんと、打楽器とヴァイオリンの持ち替えエキストラです(^ ^;;「カルメンのシンバルか・・・まぁなんとかなるな」ところが・・・

カルメンが終わってヴァイオリンの席に戻ろうとすると、「あの・・・・」と打楽器の団員が済まなさそうに声をかけます。「もう一曲お願いしたいんですが・・・」「は?何ですか?」「あの・・・フィンランディアなんですけど・・・」「げっっっ」(完全に絶句)しばらく間をおいて「あのさ、僕はヴァイオリンなんだから、だれか打楽器の人がシンバルやってくださいよ。他の小物をやりますから」「でも・・・サイズが大きいのしかなくて、みんな持てないんです」「うそっっ」(さらに絶句)

(ピンとこない人のためにご説明します。フィンランディアのシンバルは、プロオケの入団試験の課題になるくらい難しいんです。その上、非常に細かい作業が必要なので、普通 はサイズの小さな、軽めの楽器を使います。その場の打楽器は全部女の子。来られなくなった人がやる予定だったそうなんです。)

さてそれからは修羅場。練習そっちのけ、休憩時間そっちのけで、体育館の裏で練習です。で、結果 はどうだったかって?・・・・・聞かないでください。でもギャラには色がついていました(^ ^;;

9)指揮者とオケの壮絶なる戦い(^ ^;;

大学オケの時のことです。演奏旅行に行くとはめをはずしたり、いろいろ失敗をすることはかきました。それ以外にも、私のいたオケでは、いろんなイタズラをすることがありました。

演奏会の後、会場のお客さんと一緒に歌を歌うのがオケのしきたりだったのですが、この曲の序奏は、演奏旅行中は「旅行先にあったアレンジ」をするのが常でした。序奏の中で、木管とホルンが演奏する8小節が、行く先々で違った音楽になるのです。秋田へ行ったときは「ドンパン節」、広島なら「カープの応援歌」という具合。もちろん、指揮者の先生は知らないわけですから、団員にはなかなか楽しいイタズラでした。

さて、このオケには、とっても「のりのいい」先生がいました。(まだ振っていらっしゃいます(^ ^))音楽的にもすばらしい方ですが、イタズラへの理解度も超一流(^ ^;;演奏旅行は、やるかやられるかの戦いです。

ある日、先生の方からイタズラの申し入れがありました。あれ、そうだったかな。団員が先生に言ったのかもしれない。ちょっと記憶が曖昧です。(今こんな話を書くと「セクハラだ」といわれてしまうんですが・・・ま、書いちゃいましょう。)ちょうどヴィオラの1,2,3プルトに、3人の素敵な女性が座ることになっていました。アンコールの時です。とても長いアンコールの曲で、ちょうど譜めくりが3回あります。まず最初の譜めくりで、一番後ろの女性がのけぞりました。次に2番目、最後にトップ。そう、譜面の間に、ちょっとエッチな写真を挟んでおいたのです。先生は、わくわくして、踏めくりしておどろくさまをながめていました。そして、最後のお楽しみがおわると、満足そうに笑いながら、正面を向いて指揮を続けました。そして、スコアの最後のページをめくると・・・・出てきたのは、これまた変な写真だったのです。先生、びっくりして、「やりやがったなぁ」とつぶやきました。この声は、しっかり録音されています。

さて、翌年の演奏旅行のことです。これまた、先生を引っかけることになりました。今度は、レスピーギの「古代舞曲とアリア」のシシリアーナです。アンコールだからくり返しはなし、というのが打ち合わせでした。でも、団員の間でこそっと「くり返しやるぞ」という打ち合わせができていました。先生は当然、繰り返しがないと思って、先をふりました。しかし、オケは平然と繰り返しをします。先生の顔がみるみる紅潮しました。そして・・・繰り返しが終わって次にはいると、突然指揮をやめ、「おめーら自分で合わせろよ」とばかり、トップをぐるっと見回します。さて、みんなは真っ青(^ ^;;必死でリーダーに合わせました。この勝負、先生の勝ちに終わったようです。

10)ピットの中は無法地帯?

みなさんは、オペラやバレエの演奏会の時のオーケストラピットを覗いたこと(ないし演奏したこと)がありますか?この中では、お客さんの知らないいろんな事が起きていることがあります。

まず、条件があります。ピットが十分に深く、オケがお客さんから死角になっていないと、プレーヤーは「常に見られている」と思っていますから、面 白くありません。普通の演奏会と同じです。それと・・・まじめなアマチュアプレーヤーにはあまり関係ないかもしれません(^ ^;;話の多くは「不真面目なプロ(ごめんなさい)」に聞いたものです(ないし、体験したもの)。

まず、服装。上は普通であることが多いですね。しかし、下は?結構面白いモノが見られることがあります。私は、「つっかけ」の人を見たことがありますが、あるプロは、夏の暑いときに「短パン」で吹いたことがあると言ってました。ボールを蹴って遊んだこともあるとか(^ ^;;

ピットの中って、意外とつまらないんです。多くのオケプレーヤーは、進行しているオペラが全く見えません。いちばんよく見えるのは、バイオリンかな。(ピットの中では通 常と反対に、外側にセカンド、内側にファーストということも多いので、その外側の方ですね。)一番外側の人は、よく舞台を下から見上げてぽかんとしてます(^ ^;;

極めつけ・・・

最近はそのような習慣はなくなったようですが、昔はピットは博打場だったそうです。博打好きが何人か、必ずトランプを持ち込んでいたとか・・・「音がするからチンチロリンはできない」と言ってました。ほんとかぁ???

11)シャンデリアががっしゃーん

ロンドンで出会った実話です。会場は、プロムスで有名なロイヤル・アルバートホール。バーミンガム交響楽団の演奏会でのことでした。

前半は、ブラームスの四番のシンフォニー。大好きな曲です。始まってほんの数分後、二階席からなにげなくステージを見ていたら、何と、シャンデリアが・・・まるでスローモーションを見るようでしたが、切れて落ちてきたのです。ステージの上に。幸いだれもいないところでした。落ちる寸前、客席が息を呑むのが判りました。それで・・・演奏は続いたんですねぇ。凄い。

こういう話は、色々聞きますね。よくあるのは、停電の話。本番で停電すると、オケならまず止まります。みんなが暗譜しているわけじゃないし、指揮者も見えませんからね(^ ^;;私は残念ながらであったことありませんが。

12)禁断のガイド

あるアマチュアオケでの演奏会でのことです。演目は「第九」。

ソリストは、もちろんプロの方をお願いしました。だから、練習は一回だけ。どうも、ソプラノさんの調子が悪いようです。それは、当日のステージリハーサルになっても続きました。特に・・・最後の四重唱の見せ場、Hが出ないんです。必死に音程を上げようとしているのはわかるのですが・・・ほとんどBにもならない・・・ステリハが終わってから、ボイストレーナーにピアノをたたいてもらって練習していますが、どうしてもとれません・・・お客さんは息を呑んで聴くところです。リーダーをしていた私は頭を抱えました。そして・・・

本番のステージの直前、トップサイドの若い男の子に「小さな音でソプラノの最後の音をガイドしろ」と命令しました・・・「そ、そんなことやっていいんですかぁ?」と彼は真っ青。「いい。責任は僕がとるから」。

さて、運命の(合唱の、ですね)本番。真面目な彼は、私に言われたとおり、Hの直前からガイドをこそっと弾きました。その瞬間、ソプラノの顔色が変わるのがわかりましたが、練習よりはHに近づきました。それで・・・どうなったかって?

演奏会の後、ボイストレーナーにこっぴどく叱られました。いわく、「こんな侮辱を受けたのは初めてだ」。でもねぇ・・・こっちはギャラ払って来てもらってるんだから・・・Hが出ないなら引き受けないで欲しかった。それがプロってもんじゃないかい、と、反省はしていません。同じ事がもう一回あったらどうするかって?決まってるでしょ。またやります。

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