柏木真樹 音楽スタジオ

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ロオケは普通、年間100回以上の演奏会をします。ですが、アマチュアオケの活動の中心は練習にあります。(いや、練習後にあるのだ、という人もいるかもしれませんね(^ ^))ですから、練習中にもいろいろなハプニングが起こります。そんな話を集めてみました。

[目次]

1.練習中のイタズラ

2.ぼく、うまいんです君

 

1.練習中のイタズラ

1)指揮者には絶対音感があるか

練習中に、いろいろなイタズラをするのは、アマチュアオケの特権でしょうか。とにかく、いろんなことがありました。特に、学生時代は、指揮者の先生ともなんとなく馴れ馴れしくて(本当はいけないんですよ)、しょっちゅうイタズラをしていました。

違う音を出す・・・というイタズラはよくやりました。指揮者(またはトレーナー)の先生がいつ気がつくか、という、実に失礼きわまりないイタズラです。どうするかというと、始まった瞬間、全員が例えば半音高く始めるわけです。奏者の方にもかなりの負担がかかりますので、早く気がついてくれないと、オケは崩壊します(^ ^;;これが、曲によっては、以外と分からなかったりする。もちろん、絶対音感のある指揮者や、よい耳を持っている指揮者には通 用しません。でも、時にはオケが完全に崩壊するまで進んでしまうこともありました。

ある日、ある指揮者にこのイタズラを仕掛けることになりました。出だしはトランペットです。先生は指揮棒の予備動作に入った瞬間、振り下ろさずに、指揮棒をおろしました。「何をやろうとしているんですか?」先生は笑顔でお聞きになりました。団員はみんなずっこけ。なんでばれたかって?ブレスが不自然だったんですって(^ ^;;それ以来、その先生には、その手のイタズラはしなくなりました。

2)曲はどこへ行く

私のいた大学オケの定番のイタズラは、「曲のとっかえっこ」でした。何かというと、ある曲が進んでいるときに、同じ和音、リズムなどをもつ他の曲にスイッチしてしまうのです。今から考えると、結構準備も大変なのによくやっていたなぁ、と感心しますが(^ ^;;練習している曲に相応しいところがあると、全員の譜面を配って(時にはわざわざ作って(^ ^;;)練習にのぞみます。指揮者(またはトレーナー)は、もちろんそんなことは知りません。ですから、みんな緊張して、そこへ行くと「やったー」ってな感じで、違う曲に突入するのです。だいたい、数小節から1フレーズくらい、呆気にとられている先生を無視して演奏して、みんなで大笑いして終わります。むりやり続けられるところは、以外とたくさんありますよ。特に、モーツァルトなんか大変。ちょきちょきしてはりつけると、あっちからこっちへ、こっちからあっちへと飛ぶことができます(^ ^;;

さて、ある時、ドボルザークの8番を練習していました。2楽章の101小節から、ブラームスの1番の4楽章の冒頭へと飛ぶお約束です。さて、101小節目にはいりました。すると指揮者の先生、にやっと笑って、「よし、最後までついてこいよ」と一言。「え、」と驚く団員を後目に、颯爽とブラームスを振り始めました。全然練習していなかった訳ですから、団員は必死です(^ ^;;結局、オケが崩壊して「オケの負け」に終わりました。ないはずのコントラバスがC音を弾いてしまったのを、先生は聞き逃さなかったようです(^ ^)

3)イタズラされて男(女)を上げる

これも大学オケでのイタズラです。別名「ソロひかせてやる(^ ^;;」。

やり方は簡単。弦楽器(ファーストが一番いいですね)の難しいところ、特に飛びつきのところで、ある一人以外の全員が突然弾きやめるだけです。例えば、ドボルザークのスラブ舞曲のCDurなんか最高(^0^)。くり返して戻ったところで、犠牲者を除く全員が弾きやめる訳です。すると、あわれな犠牲者は、突然一人で弾かされることになります。音を外したりかすんだりしようものなら、みんな大喜び(^0^)。しかし、すばらしい音できれいに弾いたら、男(女)を上げることになるのは言うまでもありません。

2.ぼく、うまいんです君

これは、エピソードという訳ではないのですが・・・

本番近くのアマチュアのオケに練習に行くと、たいてい「本番要員」のエキストラがいます。多くはベテランアマチュアプレーヤーですが、オケによってはプロや音大生が混ざっていることもあります。

さて、このエキストラ君たち、ほとんどの場合、多くの団員より「上手」に弾けるものです。当たり前ですよね、トラにくるんですから。この人たちの中に、ある傾向があります。ここで話題にするのは、席に座ると調弦もそこそこに「コンチェルト(もちろん、バッハの無伴奏なんかでもいい)」を弾き出す人。こういう人は、周りがオケの曲を練習しているのを尻目に、せっせとコンチェルトを弾いています。いや、その目立つことと言ったら・・・

こういう人を、家では「ぼく、上手いんです君」と呼んでいます。大抵は「トラ慣れ」した達者な方ですが、ほとんど「そこそこ」なんですね(^ ^;;本当にぶっ飛ぶほど上手な人がこんなことをしているのに出会ったことがない。

話は、20数年前に飛びます。

大学オケのお座敷で、ある合唱団のオーケストラを担当したときのことです。僕はまだ一年生だったので、後ろの方で弾いていました。周りには見たことがない人たちがいます。その人たち、練習不足なのかちゃんと弾けてないんですよね。特に僕の隣に座った人は、「落ちる」だけじゃなくて本当に「弾けてない」。合唱団の地元のアマチュアオケの人かなぁ、と思っていました。それが・・・

休憩時間になると、そのうち何人かが颯爽とコンチェルトを弾き始めました。そんなに上手な訳ではないのですが、少なくとも大学オケの多くの人よりは上手そう。こんなに弾けるのになんでちゃんと弾かないんだ?と少々頭に来ました。そのことをトップの先輩に言うと、「あいつらちゃんと弾いてないの?」。どうやら、東京の某有名音大の学生さんたちらしいのです。(ちなみに、芸大、桐朋ではありません。)休憩が終わって練習が始まると、相変わらず弾けていません。

練習後、とうとう言ってしまいました。「あの・・・ちゃんと弾いていただけませんか?」その学生君たち、恐縮するより「何言ってんだ、こいつ?」という顔で見ています。僕も気が強い方ですから、さらに、「コンチェルトをさらう暇があったら、弾けないところをさらったらいかがですか?」と追撃。さすがにすごすごと退散しました。

さて、この話には後日談があります。

あるプロのオケ奏者の結婚式にご招待されたときのこと。くだんの「ぼく上手いんです君」に会いました。こちらは覚えていなかったんですが、向こうは僕を見るなり苦い顔。話を聞くと、どうやらプロオケで弾いているようなんです!正直、びっくりしました。周りの同僚が話を聞くと、「こいつ、昔からそうだったんだ。今や歩く×××(オケの名前)の恥、って呼ばれてるからなぁ」とからかわれています。そうだったんだ・・・と少し安心???

最近、某アマチュアオケのトレーナーをされているようです。どんな風に変わったのか、お会いしてみたいと思っています(向こうは迷惑でしょうが・・・)。