柏木真樹 音楽スタジオ

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レクチャーコンサートの感想を、生徒だけでなく、たくさんの方(合わせて現時点で30人ほど)からいただきました。どうもありがとうございました。その感想と、私が思っていることを少し書いてみたいと思います。

コンサートそのものを「楽しめた」という方が多かったことはとても嬉しく思っています。特に、音律の異なったピアノの違い、和音による響きの違い、モーツァルトの曲による違いを感じていただけた方が多かったことは、今回のレクチャーコンサートの目的をある程度達せられたと思っています。その点については、以下のような感想をいただきました。

(複数、は、概ね5以下。多数は二桁以上の人からの感想です)

  • ・古典調律のピアノの和音がとてもすなおで気持ちよかった(多数)
  • ・家のピアノもキルンベルガーにしてみたい(複数・・ちょっと驚きました)
  • ・和音による響きの違いがとても面白かった(多数)
  • ・最初の二曲はヴァイオリンの音がピアノに溶けているようだった(多数)
  • ・最後の曲はヴァイオリンとピアノが別のキャラクターに感じた(多数)
  • ・二時間半が短かった(多数)
  • ・モーツァルトの知らない面が面白かった(多数)
  • ・モーツァルトの楽しみ方が変わるように思えた

一方で、

  • ・和音の違いがよく実感できなかった(複数)
  • ・平均律のピアノの方がしっくりきた(複数)
  • ・古典調律のピアノでの演奏は、ヴァイオリンも含めて物足りなかった(複数)
  • ・最初の二曲のヴァイオリンの音程は気持ちが悪かった
  • ・みなさんが「きれい」と感じた方がしっくりこなかった(複数)

という感想もいただきました。

結果としては、予想していた以上にみなさんが好意的な感想を述べていただきました。とても励みになります。その感想を踏まえて、いくつかのことを書いてみようと思います。

平均律のピアノの方がしっくりくる、という感想は、実はもっとたくさんの方から返ってくるのではないかと思っていました。古典調律のピアノを初めて耳にする方がほとんどであるはずで、慣れ親しんだ平均律の方が聞きやすくても不思議ではないからです。これは、あちこちに書いている「平均律は化学調味料」ということで説明がつくと思います。何回か繰り返さないと、違いはわかっても古典調律のピアノが気持ちがよいと思えない人が多いだろう、という予想を立てていたからです。ところが、現時点では「平均律の方が好き」派が圧倒的に少数です。二つを並べて、ある程度解りやすい和声進行で弾き比べをしたことが良かったのかもしれません(余談ですが、一番受けたのが「悲愴」の弾き比べだったようです・・苦笑)。

同じ理由で、最初の二曲のヴァイオリンを「気持ちが悪い」と感じる人も、もっと多いのではないかと思っていました。最初の二曲は、古典調律のピアノと全く同じ音高(場所によってはできるだけ協和する音程)で弾くようにしたのですが、当然、旋律線もピタゴラス音律ではありません。慣れ親しんだ旋律進行からはかなり乖離しているので、気持ちが悪いと感じる人がいても全く不思議はないからです。練習は非常に神経を使う作業でしたが、ピアノと協和する音程でほぼ弾けたことが、気持ちの悪さを緩和したのかもしれません。そうであれば、とても嬉しいことですが。

アンケートでも、「古典調律と平均律の弾き比べをもっと聞きたい」という声がとてもたくさんありました。ピアノだけでやるより、旋律線が独立している分、わかりやすい(感じやすい)のかもしれません。検討してみる価値がありそうです。音律や作曲家が書いた調性について興味を持つ方が多いことを願っていましたが、その意味では成功だったようです。