柏木真樹 音楽スタジオ

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Column
 2000/1/1 Sat. 02:00

また、大上段に振りかぶったようなタイトルですが・・・中身はあまり大したことありません(^ ^;; 
以前(1993年)、あるアマチュアオケで書いた雑文です。

 

◎ 音楽の意味と価値

私たちは、なぜ音楽をするのでしょう。せっかくの休みに、わざわざ遠くから(の人もいますよね)集まってオケをやる。そのために、家庭内不和を起こしている人もいるかもしれませんし、 仕事に支障を来している人もいるかもしれません。それでいて、できあがった結果は、人様に胸を張ってお聴かせできるような代物か、というと、はなはだ心許ないこともたびたびです。かくいう私も、オケでコンマスなんかをやっているために、どうしてもオケの優先順位が高くなって、他のことが犠牲になることもあります。

「音楽は人生を豊かにする」「音楽によって、人々は心を和ませる」「音楽のもたらしてくれる感動が生き甲斐となる」等々、音楽の意味や価値を語ってきた言葉は数多いですが、はたしてそれらが真実を語っているのでしょうか。

自分にとってみれば、どうやら音楽というものは欠かせないもののようです。しかし、それで人生が豊かになったか、心が和んだか、というと、「そういうこともあったかもしれないなぁ」 と、あまり定かな感じを持ったことがありません。一体、なぜこんなに夢中になって、音楽を「する」のでしょう。

自己表現?いえ、そうとも言い切れません。特に、私がいつも言っているように、「楽譜を越えた自己表現は私たちにとって邪魔以外の何物でもない」と思っているからです。それに、自己表現なら、オケなんかやるのは時間の無駄 です。一人でさらって、ミニコンサートでもひらけばよい。お客さんが来てくれるかどうかはわかりませんが・・・(私がやるなら、特製のタンシチューかなんかでお客さんを釣るでしょうけど)

人を楽しませる?いえ、そうではないでしょうね。だとしたら、今の100倍は練習しないといけない。

ちょっと見方を変えてみます。大野さんが、ブリテンの戦争レクイエムをやるそうです。その中で彼は、中国人と韓国人の歌手を起用します。これには、強烈なメッセージが込められている。戦争で痛めつけられた日本人に対して、この歌手たちが歌う内容を知れば、そのメッセージがわかるでしょう。ここでは、音楽に一つの意味と価値が付与されます。しかし、こういう意味のあるものばかりでもないことはもちろんですよね。

自分にとっては、この疑問は一生ものだろう、と思っています。今は、私にとって音楽はある種の栄養のようなものだ、と思っています。栄養を体に取り込むのに、演奏した方がいいのか、聴いた方がいいのか、はたまた時によるのか、それは人それぞれだと思いますが・・・

こんな雑文を書いたのは、演奏していないとき、皆さんにもちょっと考えてほしいからです。私たちはなぜ音楽をするのか、なぜオケをやっているのか・・・そして、そのことが、オケをよくする可能性がある、とも思っています。