柏木真樹 音楽スタジオ

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Column

私は「先生」と呼ばれることが好きではない。子どもたちを「教えて」いたころから、極力「先生」とは呼ばないようにお願いしてきた。理由は・・・とにかく嫌だったんだろうと思う。

こんなことを仕事にしていると、初めての人たちはどうしても「先生」と呼ぶものだとおもっていらっしゃるようだ。それがもちろん、礼儀として正しいことなのだろう。だが、一つだけどうしても気にくわないことがある。「先生と呼ばれる人が言ったことは、呼ばれない人が言ったこととは価値が違う」という意識がバシバシ感じられることだ。

これは、二つの側面がある。一つは、「先生の言うことを疑うことができないと伸びない」という事実が忘れ去られていることと、「先生は偉いから従うのだ」と思ってしまう人が多いということだ。

前者については、あちこちで書いている。特に大人にとっては、先生の言うことの真意をさぐり、よくわからなかったら質問する、疑問を投げるなどの手段で理解を深めることが重要だ。それをしないと、先生自身が生徒の状況を理解できず、相応しくない教え方をしてしまう場合も少なくないものだ。

さて、後者である。

今回、初めて行った「一日クリニック」の懇親会で、何人かの参加者にははっきりと伝えたことだが、「先生はサービス業だ」ということを理解してほしいと思う。先生は生徒の要求に応える義務がある。そのためにレッスン料をとっているのだ。それは、レストランに入って美味しいものを期待することとなんら変わりはない。先生は「偉い」のではなく「自分にないスキルや経験を持っている」だけのことなのである。

「先生に質問する・口答えするなんておこがましくてできない」という方は多い。もちろん、それはもっぱら先生の側に問題がある。「俺の言うとおりにやればいいんだ」と頑なに主張して、生徒の疑問を封鎖してしまう先生は多い。私のところにも、そんな例はたくさん報告されている。ストリング誌やHPの記事を先生に持っていって質問したら「そんなものは忘れなさい」と一言の下に退けられた、ということを語ってくれる人は一人や二人ではない。そんな経験をしたら、恐ろしくて先生に質問などできなくなってしまうだろう。もちろん、私の書いていることが全て正しいとは限らない。私は自分が現時点で正しいと思ったことを書いているだけであって、それが普遍的であるとか未来永劫正しいなどとは思っていない。だから、人から「これは違うんじゃないの?」と指摘されることは大歓迎だ。そのことが自分を鍛えることにもなるのだから。しかし、多くの「センセイ」はそうではないらしい。

さて・・・私が習うときはどうするか・・・というと、「先生」と呼びたいと思う人にはそう呼ぶことにしている。教えることを生業にしているから、とか、議員だから・弁護士だから、という理由でその人を「先生」と呼ぶことはない。「先生」という言葉が「センセイ」にならないように、気を付けていこうと思っている。