柏木真樹 音楽スタジオ

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「ヴァイオリン教師の資質」のところに、「レッスンが必ず先生本人で一対一で行われていることが必要」と書いたのは、もう5年以上前のことです。そんなことを書いた本人が、アシスタント制を使うようになるとは、思ってもいませんでした。

私が「先生が必ず本人で」と書いた理由は、高校生の時に自分が先生の代稽古をさせられた体験の反省からでした。教えることはそんなに簡単なことではなく、弟子が簡単に先生の代わりをすることなど許されないと考えたからです。また、友人の大手ヴァイオリン教室の先生が、「代行制度」があることを教えてくれたことも、その思いを強くした原因です。ところが、自分がこのような立場になってしまうと、私が持っているノウハウを少しでも広げたいと思うようになりました。

レイトスターターを主に教えてきた私ですが、最近こられる方は、体を痛めた専門家志望の方やベテランのアマチュアが増えてきました。その結果、私が感じてきたレイトスターターの問題点が、こうした人たちにも当てはまることが多いこともわかってきました。そこからさまざまな奏法を勉強してみると、いろいろなことがわかるようになってきたのだと思います。そうした中で、何人かのヴァイオリンの先生(や先生志望の方)と共に勉強をするようになり、少しずつ、私の方法論を広げていくことができるのではないか、と思うようになったのです。

試験的に、少しずつレッスンを分担することを続けてきましたが、非常に良い成果が上がるようになってきました。アシスタントの一人には、課題を決めたレッスンを分担していただいていますが、時間をしっかりかけたレッスンが必要な場合、非常に効果的です。もう一人は、分担していただく生徒さんへの私のレッスンに立ち会っていただき、その中で問題点を確認しながら、少しずつレッスンを分担し始めています。お二人ともきちんとした専門教育を受けられた方で、私のレッスンに最初は非常に戸惑われていましたが、最近は私の発想法を理解していただけるようになったと思います。結果として、お二人の経験が、私一人のレッスンよりも多くの成果を上げられるようになるのではないかと思っています。

通常のスタイルではできない、非常に贅沢な「アシスタント制」ですが、生徒さんのためにはとても良い方法なのではないかと自負しています。お二人のおかげで、私自身の勉強になることもたくさんあり、レッスンの質をさらに向上させることができるのではないかと期待しています。

実は、自分がヴァイオリンを教えることについてかなり迷った時期がありました。しかし、卒業して音大で修行している生徒が私に言ってくれた一言が、大きな力になりました。また、生徒さんたちが私のレッスンに期待することが大きくなっていくことを実感できたことも、このような形をとって少しでも輪を広げたいと思うようになった力です。先生を育てるのは生徒さんたちなんですね。私は、すばらしい生徒さんたちに恵まれて幸せな指導者だと思います。