柏木真樹 音楽スタジオ

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Column

音程の良いピアノ、といっても、調律の話ではありません。私たちは、ピアノもヴァイオリンも一応弾くのですが、ピアノの音程がとっても気になってきました。

ご存じのように、ピアノは平均律に調律されます。ですから、例えば長三和音なんかを無神経にたたくと、とっても汚い音がします。また、スケールだって、あんまり気持ちが良くない。ピアノだけを弾いているとあまり認識しないことが多いのですが、弦楽器と一緒に演奏すると、てきめん、音程の悪さが気になります。

このことは、長い間、私にとっては「解決使用のない問題」でした。なぜって、ピアノは音の高さが決まってしまっているからどうしようもない、と思っていたんです。でも、「きれいに聞こえるピアノ」と「汚く聞こえるピアノ」があることは気がついていました。初めのうちは、純粋に打鍵やペダリングなどの技術的な問題で「きれいな音がしている」から美しく感じるのだろう、と単純に考えていました。しかし、よくよく聴いてみると、どうも音程が良く聞こえることもあるのです。例えば、ミケランジェリのピアノを聴くと、とても音程が良い和音がなることがしばしばあります。さていったいどうしたことなんでしょうか。

その疑問が解けたのが、今から四年前に、日立で室内楽の公開レッスンを受けたときです。

ハイドンのトリオを受講したのですが、その場でピアニストに「音程をよくしなくちゃ」という指示がありました。先生はヴァイオリンの先生だったんですが(^ ^;; まるで、ピアノのレッスン。

先生が弾くと、確かに音程が良いんです。ドミソの和音をたたくだけなんですが・・・

秘密は、打鍵のタイミングにありました。ピアノの五度はまだ許せる音程です。(ほとんど純正調とかわらない)問題は第三音。このミの音をたたくのを、五度よりほんの少し遅らせるのです。もちろん、ずれているように聞こえるほど遅らせてはいけません。こうすることによって、楽器が響いている五度の中に、第三音がハモるように聞こえます。(是非やってみてください)

さて、一つ解決すれば、あとは応用問題。まず、ペダルを極力取りさります。そして、音程と楽器の響きを聴きながら工夫すると、無神経に弾くのとは比べものにならないくらい、良い音程のピアノになるわけです。
こうしてみると、この微妙な作業がきちんとできている耳の良いピアニストの演奏は、音程がいいんですね。迫さんなんかがその代表でしょう。これに対して、音程に無神経なピアニストの音は、やはり耐え難く汚い。

このことがわかって、ピアニストに出す注文が増えました(^ ^;;やはり、アンサンブルをするときには、少しでも音程の良いピアニストとやりたいですね。